テラーノベル
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朝のSHR。
遅刻ギリギリで教室に入った瞬間、吉沢先生と目が合った。
「〇〇、席につくのは始業のチャイム前だ」
「……はい」
返事をしても、視線は冷たいまま。
授業中、ちょっとだけノートに落書きをしていたら、
「そこのページ、授業後に見せろ」
……そんなの、別にいいじゃない。
ちょっと気分転換したかっただけなのに。
終わって見せると、先生はノートを軽くめくってため息をつく。
「やる気がないなら、来なくていい」
その一言で、胸の奥がじくっと痛んだ。
言い方ってものがあるでしょ。
放課後、友達と笑いながら昇降口へ向かっていると、
「〇〇、廊下は静かに」
もう反射的に返事をして、そのまま背を向けた。
――ああ、ほんとに。
この人の声を聞くと、息が詰まりそう。
昼休み。
机に突っ伏してスマホを見ていたら、背後から影が落ちた。
「〇〇、スマホはしまえ」
「……休み時間ですけど」
「休み時間でも節度はある」
またそれ。正論っぽいことを押しつける言い方。
友達は「先生、厳し〜」と笑ってくれたけど、私は笑えなかった。
午後の授業では、提出したプリントに赤ペンでびっしりコメントがついて返ってきた。
「字が雑」「説明不足」……。
指摘されてることは分かるけど、ここまで細かく言う必要ある?
授業後、先生が私の席に来て低い声で言った。
「お前ならもっとできる」
……そんなこと、今さら言われても響かない。
どうせまた次も怒られるんだから。
帰り道、友達に「〇〇、先生となんかあったの?」と聞かれた。
「ううん、何も。ただ――嫌いなだけ」
第4話
ー完ー
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