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先輩とたわいのない会話をしながら学校に向かう。なんてことない日常の景色がなぜかとても輝いて見える。
駅の前くらいまできた時先輩は何かを思い出したように
「そう言えば私いかなきゃいけないとこあった」
そう言って先輩はどこかに走って行ってしまった。
「なんだったんだあれ」
小さくなっていく先輩の背中を見ながら
そんなことを呟くのだった。
いつものように前から二番目の席に座って教科書用意する。まだ講義が始まるまで少し時間があったので本を読むことにした。
「「死後の惑星」」と言う少し物騒なタイトルの本だ。本屋で端っこの方にぽつんと一冊だけ売れ残っていて、なんだか可哀想で買った本だったが、これがなかなか面白い。
15分ほど本を読んでいると
「また、それ読んでんのかよ。よく飽きもせず」
一人の男が声をかけてきた。顔を上げると中学の頃からの同級生の海斗だった。
「いいだろ別に割と面白いんだぞこれ。貸してやろうか?」
そう言う俺だったが、こいつは小説をじっくり読むタイプではないので返事はなんとなく予想していた。しかし
「んじゃあー、一巻だけ貸してくれよ」
思いもよらない返答に俺が目を丸くしているのを見てそいつは
「なんだよいいだろ別に、てかお前から言い出したんだろ」
そう言う海斗に俺はカバンの中に入っている小説の一巻を取り出して手渡す。受け取って早速 隣の席に座って本のページをゆっくりとめくっている海斗を見て
「珍しいこともあるもんだなぁ」
と思っていると、教授が入ってきて出欠を取り出した。今から講義が始まるのかと思うとなんだか少し眠たくなる。
講義の内容は心理学、恐怖についてだ。人は何故恐怖を感じるのかそんな内容の講義だった。
「恐怖とは常に無知から生じる。これはアメリカの思想家ラルフ・ワルド・エマーソンの言葉だ例えば人間は死に恐怖を感じるだろ?しかし、もし死後の世界が今の世界と同じだったり別の人間に生まれ変わることがわかっていればあまり恐怖を感じない。このように恐怖という感情は知識不足から来るものだと彼は考えたんだ」
そう言えば、今まで死後の世界についてそんなに考えたことなかったな。まぁ興味もないので別に知ったことではないが。
そんな事を考えているうちに講義は終了した。教科書などを片付けていると隣で海斗が
「お前もう帰るのかよ俺まだ2限目もあるのに」
と羨ましそうに言ってきた。
「俺も明日は1限と3限だから今日くらい帰らせてくれよ」
そんなことを言いながら席を立って教室のドアを開ける。
すると先から海斗が
「今日終わったら晩飯食いに行こうぜ。」
たまにはいいかと思ったが、俺は昨日葵とした約束があるのを思い出して
「んや、今日金欠なんだよわりぃ」
と断るのだった。
家に帰ってまた本を読んでいると気づけば夕方になっていた。そろそろかと思ってベットから体を起こして準備をする。
河川敷までの道で高校生を何人かみかけた。自分も身を包んだ懐かしい制服を着て友達と楽しそうに下校している。そんな彼らを見て高校の頃のことを思い出していると、何か違和感を感じた。高校に入学する前のことが思い出せないのだ。正確には中学3年生の頃より前の記憶がぽっかりと抜け落ちている。思い出そうとしたが考えれば考えるほど思い出せない。すると、突然頭が割れるような頭痛に襲われた。地面が起き上がってきて俺は倒れてしまった。
「春人!春人!」
薄れゆく意識の中で懐かしい声で俺のことを呼ぶ声がした。