テラーノベル
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「今日も麗華ちゃんは来てないね」「そっか。ありがとう、おばちゃん」
カフェのおばさんに挨拶して木製ドアを開けるとカランコロンと音がして、凍るような冷気が一気に押し寄せてくる。
もう二月だもんね。
あと一時間ほどで日が暮れそうな空は茜色に染まり、雲という膜がない今日の天候は、まとう空気が刺すように寒かった。
ただでさえ出不精な性格だから、こうゆう日は速攻で家に帰ってストーブの前で本を読むのが理想だけど、そうはしない。
私には、まだ行くところがあるから。
あれから、三週間。
私たちのクラスで起きたイジメは露見し、私だけではなく麗華も執拗な嫌がらせに遭っていたことが公となった。
主犯となる莉乃たちは一週間の自宅謹慎、便乗してた女子たちは厳重注意、傍観していたクラスの子たちは聞き取り後に注意となり、全てが終わった。
もう陰口を叩かれることも、引っ掛けてくる足に警戒することも、私物を全て持って歩き回るという情けないことに労力をかけることも無くなった。
全て、麗華のおかげだ。
「麗華ちゃん? あー、今日も来てないね」
「ありがとうございます」
本屋の店長さんに会釈して出口に向かって行く。
麗華はあの日以降、学校に来なくなってしまった。
初めの三日ぐらいは、あんなことがあったしと待っていたけど、一週間が経っても学校に来ないことに居ても立っても居られなくなった。
学校帰りに毎日寄るのは麗華と出会った本屋さんと、一緒に行った喫茶店。
もしかしたら会えるかもと僅かな期待を込めていくも、小説みたいに上手くわけないよね。
「助けてくれてありがとう」
そうメッセージを送っても既読にすらならなくて、どうやらブロックされているみたい。
だからって家まで押し寄せるのはメイワク過ぎるし、私に許されるのはここまで。
きっと麗華は女子同士の低俗な争いに、ことごとく呆れたのだろう。
あの状況で言い返せなかった私にも。
もしかしたら麗華は、このまま学校に来ないつもりなのかもしれない。
実は、また転校のハナシとかあって、それで……
「あ、」
本屋さんから一歩目を踏み出した私は、二歩目を踏み出せずに立ち尽くしてしまう。
化粧っ気がないのに透明感がある肌、艶のある肩までの髪、どこにでも売ってそうな黒のコートをモデルのように着こなし、その先に伸びる足は細くて長い。
麗華が立ち尽くしていた。
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