テラーノベル
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・短編3本まとめ
・kustard
行為を仄めかす描写があるのでセンシティブ設定です。
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「ケチャップ。その……好きだ。」
突然の、予想もしなかった片思いの相手の言葉に、長い間この想いを溢すまいと固く閉じていた筈の口はいとも簡単に決壊した。
「お、れも。」
驚きのあまりこんな言葉しか出なかった。
互いに両思いだなんて思ってなかったものだから、2人して狐に化かされたような顔しながら今さっきの会話を反芻してた。
星が綺麗な夜だった。ふたりで見に行こうって誘われて、内心浮かれながらついていって。行く時は離れていた手を、今はもどかしいくらいに優しく繋いでいる。
やわらかい草の大地に寝転んで、オレもマスタードも空を見上げているけれど、きっと想っているのはお互いのことだ。
「あ、流れ星」
いつのまにか夜空は幾分輝きを増していて、柄にもなくオネガイゴトなんて考えてしまった。
「なに、願い事でもしたのか?」
「ああ。」
「ふ〜ん…んで、ナニお願いしたんだよ?」
ワルそうな笑みを浮かべて聞いてくるマスタードに、へへ、と柔らかい微笑みをこぼす。
「……ナイショ。」
【この時間をいつまでも】
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「へへ、飲んだ飲んだ」
隣の男は相変わらずへらへらと笑っていた。
2人きりで歩く雪の道。
誰も見ちゃいない、この2人だけの帰路を辿る時間が、堪らなく好きで、
堪らなく嫌いだ。
ああ、気に食わない。
その貼り付けた仮面が。作り物の言葉たちが。仕草も、その全てが。
全部曝け出しちまえばいいのに。
そっちの方が楽だろうに。
俺と2人きりのこの時間ですら、演技をやめないその骨に、正直腹が立つ。
コイツの本音が聞いてみたい。
その笑顔の下にはどれだけの憎しみを蓄えていて、そのポケットに突っ込んだ優しい手を、どれだけ汚してきたのか。
俺は単純だった。自分を抑え込むのが上手いコイツとは違って。欲に忠実で、求めることをやめられない。
だから今だって、大嫌いなソイツを、壁に押し付けている。
「あー、マスタード?どうしたんだ──」
僅かに開いたその口に舌を捩じ込む。
俺はもう目の前の欲求を満たすことに必死だった。
「ん゛っ……、かはっ、げほっ…げほっ………
なん、だよ……はは、冗談にしてはキツイぜ……?」
まだ、表情すら崩せない。どこまでやれば、お前は演じるのを辞めてくれるんだろうな。
するりと彼の白いシャツを捲って肋骨を撫でる。
「っ、おい、やめろって……オイラたち、そんな関係じゃないだろ……?」
「……気にくわねぇんだよ。そうやってずっと取り繕って。」
「…んなこと言われても、っ──!」
体を引き寄せ、ほんの少し青を宿した目をキツく睨んだ。
「いいぜ。お前が泣いて懇願するまで──
サイッコウに気持ちよくさせてやっからさ♡」
コイツの本音が聞きたい。
好きなヤツを半端なく啼かせてみたい。
俺は欲に忠実だった。
【欲】
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遠い。
こんなにも近くにいるのに。
手と手が触れ合っていても、
こうして深く繋がっていても。
「…マスタード……」
「あ?なに……っ、」
紅潮しきった汗だくの顔がゆっくりと持ち上がる。
どこか不満そうに見つめる赤い瞳は、きっとオレのことなんて見ていない。
「………なんでもな、っあ゛、」
言い切る前に抽挿を激しくされて思考が遠のいていった。
隣で寝息を立てるソイツを眺めて、寂寥感を募らせる。
ふと、その頭に口付けを落とした。
願掛けなんてとんでもない。
なんの、意味もない。きっと。
「ケチャ、ップ……」
溢れた、小さな声。
普段の様子からは想像もできないほど、か細い寝言だった。
泣くなよ。せめて夢の中くらいは、とびきり幸せでいてほしい。
コイツも大概だなんて思っていたけど、拗らせているのはオレの方だ。
好きだよ。マスタード。
きっともう言うことのない愛の言葉を飲み込んで、視界を閉ざした。
【彼が愛するのは】