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そんな事をしていたら、もう、外に兄貴は居なかった。
その代わり、ドアの外から声が聞こえる。
《あの部屋のドア…、何があったんですか……?》
氷に阻まれてか、少しくぐもったように聞こえる声。
兄貴のでも、ソ連さんでも、時々出入りする人間でもない。
少し高めで、戸惑いと不安の混じった男性の声。
こっちを気にしないでくれ。近付かないでくれ。
誰かが側にいるから余計に苦しくなるんだ。
誰かと関わるのが怖くて、両手で両方の耳を塞ぐ。
そんな俺の耳に届いたのは、くぐもった兄貴の少し冷たい声。
《気にするな》
最後に聞こえたのは、静かな革靴の音だけだった。
兄貴は、俺を守ってくれた……?
そんな事は今はいいや。
俯いたまま、座り込んだ床を眺めると、凍て付いた床に俺の顔がまるで鏡のように写る。
目の下には隈ができていた。
ただ、痩せてはいなかった。
そりゃそうだ。ドールは自身の主が死ぬまで死ねない、不死身なのだから。
ただ、仮死状態にはなる。一定の日数以上食事を取らなければ仮死状態になるのだ。
空腹も感じるし、意外にも不便だ。
ただ、最近は食欲が全く無い。だからといって食べないでいると、兄貴が強行突破でもして部屋に入って俺の口に飯を突っ込んできそうで少し怖かった。
だから、月に一度、何か一口だけは食べる事にしている。
正直食べ物には味が無い。あまり美味しいとは思えない。
ただ、前は、兄さんばかりが料理をしていたから、兄貴の飯は珍しくて、美味しくて、大好きだったのは憶えている。が、最近は食べれる気がしない。