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私
にはわかっていた。私があの時、もっと強く言えていれば、あんなことにはならなかったかもしれない。
彼女はいつも自分のことしか考えていなかった。他人を思う気持ちなんてこれっぽっちもなかった。だから……
『もう知らない! 勝手にすれば!』
彼女の言葉を聞いて、私は愕然とした。そして何も言い返せなかった。彼女が去っていく後ろ姿を見つめることしかできなかった。
ああ、そうか。そういうことだったのか。
私のせいだったのだ。
全部、ぜんぶ、私のせい。
私はずっと独りぼっちだった。みんなから嫌われてた。それはきっと私のことが嫌だったからだ。私は自分が嫌いだった。私はダメ人間だ。私は弱い。私は臆病者だ。
誰も私のことを好きにはならない。誰も私のことを認めない。誰にも必要とされていない。誰かに必要とされることもない。私は誰からも愛されない。
私は……要らない子なんだ。
―――――――
「あー……よく寝たぁ……」
俺の名前は佐藤龍馬。どこにでもいる普通の高校二年生!……だったんだけど、今年に入って突然、超能力に目覚めてしまったのだ。
そして今日から新学期。俺はいつも通り始業式の日に遅刻ギリギリで登校して、教室へと続く階段を駆け上がっていたのだが……
「あれ!?」
なんと目の前に壁があった。正確には、踊り場の床が大きく凹んでいて、そこに足を突っ込んでしまったらしい。
「ちょっ!」
体勢を立て直そうとする間もなく、そのまま下へ落ちていってしまった。
「うわあああっ!!」
ドンッ!!ゴロンゴロンゴロゴロッ!
「痛てぇ〜……くない?」
気がつくとそこは学校の廊下ではなく、一面真っ白な空間が広がっていた。
そしてそこには一人の女性が立っていた。年齢は20代前半くらいだろうか。背中には半透明の大きな翼があり、白いローブのようなものを着ている。
(えっと……)
状況が全く飲み込めていない俺に向かって彼女が口を開いた。
「おはようございます。あなたはこの度、不幸な事故により亡くなりました」
「そうですか」
彼女は申し訳なさそうな顔をしている。
「驚かれないんですね」
「はい、それではこれから第二回【死ね】選手権を開催します!」
俺の名前は佐藤太郎。今日も元気にニートをしている。
しかし俺は今現在、自分の部屋のベッドの上で正座をしながら、同じく床の上に同じようにして座り込んでいる二人に向かってそう宣言していた。
一人は金髪碧眼の少女だった。年の頃はまだ中学生くらいだろうか。透き通るような白い肌をした彼女は、俺の言葉を聞いて目を輝かせながらコクコクとうなづいている。
もう一人は銀髪赤目の青年だった。年齢的には二十代前半から半ばほどに見える。目つきが悪く、眉間にシワを寄せた彼は、まるで苦虫を噛み潰したかのような表情を浮かべて、そっぽを向いていた。
「さぁ、まずは君たちの名前を教えてくれ」
「はい! 私の名前はアーシャと言います!」
金髪の少女が嬉々として答えてくれた。やはり名前にはちゃんと意味があるらしい。
ちなみに『ア』というのはアジアとかそういう意味ではなく、アルファベットのAに当たる部分である。
「じゃあ次はこの人の名前を……」
と言って銀髪の方を見ると、「フンッ」と鼻を鳴らすだけでこちらを見ようとすらしない。仕方ないので、俺は自分で考える事にした。
えーっと……名前は確か……。
「そうだ、思い出した。この人はギルベルトさんだよ! ルートヴィッヒのお兄さんだよ!」
「お兄様だと!?」
「……へぇー、これが噂の弟くんね~。お前に似てムキムキじゃねぇ?」
「ああ、俺の兄貴だからな」
「え? あ? うん? はぁ?」
「フェリシアーノちゃん! 俺様を忘れんなって!!」
「ヴェエェッ!! ごめんなさいぃ~!!」
「ケセセッ、泣くなよチクショーめ」
「…………」
「あれ? 菊? どったの?」
「…………いえ」
「そっかー。あ! じゃあさ! 今度一緒に出かけない!?」
「えぇ、構いませんよ」
「やったね!」
元気よく返事をする彼女は、いつものように笑っていた。
彼女の笑顔を見ると、こちらまで明るくなる気がして――。
(そういえば……)
あの日以来、彼女を見ていない。
「最近さぁ、ちょっと変わったことがあって」
「変わった事ですか?」
「うんざりするわ! どうして誰もかれもがわたしのことを『天才』なんて呼ぶのかしら!」
「天才と呼ばれるのには理由があるからさ。努力だけでは到達できない境地に君がいるからだ」
「だからその理由を教えてよ。努力じゃなくて才能の問題だって言うんでしょ?」
「もちろんそうだとも。しかし君は今のままで充分に素晴らしい。それは僕が一番よく知っているつもりだよ」
「……もういいわ。あなたと話してると頭がおかしくなりそう」
「僕は君の味方だよ。誰よりも近くで見守ってきたんだ。それに僕は君の才能を認めている」
「あなたが認めていても関係ない。わたしはもっと上に行けるはずなの。なのに皆して寄ってたかってわたしのことを抑え込もうとする」
「抑え込むんじゃない。みんな君のためを思って言っていることなんだ」