テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
誰も知らない、高嶺の花の裏側3
第30話 〚決まる場所、残る場所〛
修学旅行。
その言葉が出た瞬間、
教室の空気が一気に明るくなった。
「班は最大8人な」
担任の声に、
ざわっと音が広がる。
考えるより先に、
動き出した人たちがいた。
「じゃ、いつものメンバーで」
澪を中心に、
えま、しおり、みさと、りあ。
そこに、
海翔、玲央、湊。
誰も迷わなかった。
声を張り上げる必要も、
確認し合う必要もない。
気づいたら——
1班ができていた。
「早っ」
「もう決まったの?」
周りから声が上がる。
でも、
そこに無理はなかった。
“一緒にいるのが自然”
ただそれだけ。
少し離れたところでは、
海翔の友達たちも
すぐに集まっていた。
笑いながら、
軽く肩を叩き合って、
2班が完成。
そこからが、
少し長かった。
3班。
4班。
5班。
6班。
「誰入る?」
「人数足りる?」
声が重なって、
動きが遅くなる。
その時。
「……俺も入れてほしいんだけど」
真壁恒一の声。
教室が、
一瞬だけ静かになった。
彼は、
いくつかの班を見て回る。
「人数、まだ余裕あるよね?」
「一緒に行ったら、楽しそうじゃん」
おねだりするような、
少し軽い口調。
でも——
誰も、
すぐには返事をしなかった。
目を逸らす人。
小さく首を振る人。
「……ごめん、もう決まってる」
「うちは、人数いっぱい」
理由は、
それぞれ違う。
でも、
結果は同じだった。
どの班にも、
入れなかった。
真壁恒一は、
1班の方を見た。
澪たちがいる班。
でも——
そこには、近づかなかった。
声も、
かけなかった。
少しだけ、
その場に立ち尽くして。
「……そっか」
小さく呟いて、
別の場所へ行った。
誰も、
追わなかった。
黒板には、
次々と班の名前が書かれていく。
空欄が、
一つ減って、
また一つ減って。
澪は、
その様子を黙って見ていた。
胸の奥が、
少しだけ重くなる。
(……決まるって)
(こういうことなんだ)
一緒に行く人が、
“選ばれる”こと。
同時に、
“選ばれない”人がいること。
修学旅行は、
楽しみなはずなのに。
その影で、
はっきりと線が引かれた。
——入る場所。
——残る場所。
チャイムが鳴る。
1班の席に、
自然と人が集まる。
澪は、
仲間の声を聞きながら、
もう一度だけ教室を見回した。
真壁恒一は、
一人で座っていた。
その距離は、
さっきよりも、
少しだけ遠く感じた。