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「はーいみんなー。もうお風呂入ったー?」
一見、呑気そうなルーシーの声が聞こえる。今日は訓練はなく、施設見学のみで終了した。明日から本格的な訓練を行う方針へ変更となった。あんなことがあった後だ。あまり目立つ動きはしない方が懸命だろう。
「ルーちゃんせんせー!一緒に寝よ!」
「ウァラク…!…すまんが先生夜はみんなの護衛しなきゃならないんだ。」
「え~いいじゃん!一緒にお話しよ~!」
「それに、先生がいたら話しづらいこともあるだろ?ほら、もう遅いからさっさと寝る!」
「ほらクララちゃん。先生に迷惑かけたらダメよ。」
「すまんなエリザベッタ。ウァラクを頼むわ。ケロリ、何かあったらすぐに呼べよ?飛んでくる。」
女子寮では、何故かルーシーと一緒に寝たがる生徒たちを宥め、ひとまず護衛場所に互いに集まり、今日の出来事について、もう一度改めて話すこととなった。
重たい空気が流れる。彼女自身、きっとまだ整理が追いついていないのだろう。俺自身も、彼女に聞きたいことが山ほどある。だが、心と脳が上手くはたらかず、言葉が出てこない。今日たった一日で色々なことが起きすぎた。まさかこんな事になってしまうなど、誰が予想出来ただろうか。そんな少し気まずい空気・沈黙を、ルーシーが破った。
「アイツらの言う”あの方”、大方検討がつきました。」
「は?」
衝撃の一言だった。まるで脳天を撃ち抜かれたかのような感覚に陥った。それなのにも関わらず、彼女の声を落ち着き、その声は冷静さを物語っていた。
「恐らく、俺の父っす。ずっと行方不明だと思ってたんです。」
「お前の、父?」
彼女はバビルスの生徒だった時からずっと、自分が何者なのか、血縁関係者は誰なのか。また、自分に2つ能力があるのは何故なのか。わたしが見ている限りでも、4年間暇さえあれば文献を漁っていた。
「俺の母は恐らく、伝説上の堕天使の”ルシファー”っす。これは前に伝えたと思うんで、分かってると思うっすけど。」
そう。彼女の母親は、伝説上の悪魔とされていた堕天使ルシファーである。まだ確実、という訳では無いが、ほぼ間違いない。第一に彼女の能力「天創」。この能力は、長年幻の能力として語られてきた。伝説上の堕天使が持っていたとされる能力である。幻、と語られても仕方がないだろう。そんな幻を、彼女はもっていた。それが確たる証拠である。
「今日、施設見学の時に図書室を見つけました。特別に許可を貰って禁忌エリアにいかせてもらったっす。そこで、こんな本、というか書物を見つけました。 」
『破滅の地』というタイトルのかなり昔の出来事を記録している書物だった。
「すべて、読みました。ここの地域には”デストロイ”と呼ばれる古来からの悪魔が住んでいるそうっす。その悪魔の能力は、破滅。俺と同じなんです。超越した回復能力、すべてを消滅させる能力。全く同じだと思わないっすか?」
言葉が出てこない。確かに彼女の体質、能力と酷似している。デストロイの伝承は、兄を通じて聞いたことがあった。一昔、ここの辺り一帯をすべて消したという伝説がある。まさか、そいつとは…。
「この中の記述に、デストロイには嫁がいたとありました。その女は万物を作り出す能力があり、透き通る目、光っているような髪をしていたと、書かれていました。」