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コーラ
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蒸し暑くなってきたある朝。太陽から燦々とエネルギーやパワーが降り注いでいる。そろそろ夏本番だ。
「ああ、暑い〜。溶けてしまいそうじゃわ……」
私は夏に負けてしまいそうなほど、ダラダラと歩いた。だって、シャンと歩けるほど、体力は残ってないんだもん……。
そんな私を見て、友達の河野 澄子 が団扇でぱたぱたと風を送ってくれた。
「ありがとう。澄子は女神さんだ〜!」
澄子は「そんなことないよ」と微笑んだ。
「じゃあ日陰を選びながら行こっか。」
澄子の提案で、日陰を選びながら学校へ向かった。
学校に着いた。今日もクラスは平和だ。
みんな大きく笑い合って、とても幸せそう。
教室の窓からは、日差しが差し込んでいた。
みんなの笑顔を、より一層輝かせているみたい。
外からは、蝉の鳴き声が絶え間なく聞こえてくる。
「ほんとに暑いねぇ。そうだ、今日の放課後、一緒にかき氷食べに行かない?」
澄子が目を輝かせて私に尋ねる。
私は「かき氷」という単語に反応した。
「かき氷!?食べに行きたい!!」
あぁ、放課後が一気に楽しみになってきた!
このパワーで、今日の授業も頑張れそう!
すると、先生が入ってきた。
「はい、席につきなさい。」
いつもと同じ声。いつもと同じ朝。
──のはずだった。
「……最近、空襲の被害が広がっとる。」
教室の空気が、少しだけ変わった気がする。
「もしもの時のために、防空頭巾はすぐに使えるようにしておくこと。分かったな。」
みんなはまだ他人事のように返事をする。
この前のお姉ちゃんと一緒だ。
まだみんな、広島は大丈夫って、心のどこかで思ってる。私もそのうちの一人。
そして、私は自分の鞄に目をやった。そこには防空頭巾が結びつけてある。
(もしもの時、か……)
ちらりと澄子の方を見ると、澄子は真剣な顔で先生の話を聞いていた。
放課後。
私は澄子と並んで、いつもとは違う道を歩いていた。
向かう先は、少し離れた甘味処。
「いらっしゃいませ!」
暖簾をくぐると、綺麗なお姉さんがお出迎えしてくれた。
私と澄子は、メニューを見る。
「私、みぞれにしようかな。」
澄子はもう決めたらしい。私はまだ迷っている。
みぞれ、黒蜜、餡子……どれも美味しそう。
「……じゃあ、私は餡子にする!」
綺麗なお姉さんは笑顔で頷きながら、紙に私たちの注文を書いている。
「少々お待ちください。」と言って、厨房に消えていった。
私たち二人は、かき氷を楽しみに待っていた。
すると、近くで座っていた女性二人の会話が不意に聞こえた。
「大阪もやられたらしいよ……。」
「げに?東京だけじゃなかったんじゃね……。」
私は思わず、息を呑んだ。
(大阪も……?)
東京だけじゃない。
遠くの話だと思っていたものが、少しだけ近づいた気がした。
「……千鶴子?」
澄子が心配そうに私の顔を覗き込んだ。
「ううん、なんでもない!」
私は慌てて笑ってみせた。
(大丈夫。広島は、まだ大丈夫。)
「お待たせしました!」
厨房から、綺麗なお姉さんがお盆を持って出てきた。
お盆には、キラキラと輝いた、まるで雲のようなかき氷が二つ乗っていた。
綺麗なお姉さんは、私たちの目の前にかき氷を置いた。
「うわぁ、げにうまそう!」
私は思わず目を輝かせた。
「うん、美味しそうだね。溶けないうちに食べよ!いただきます。」
「うん!いただきまーす!」
澄子と一緒に、笑顔でかき氷を食べた。
一口すくって口に運ぶと、ひんやりとした冷たさが、じんわりと広がる。
ふわふわの氷が舌の上で溶けて、甘い餡子の味がやさしく残った。
「ひやい〜……でも、うまい……!」
思わずそう呟くと、澄子がくすっと小さく笑った。
外では、相変わらず蝉が鳴いている。
夏の音と、甘い氷の冷たさ。
さっき聞いた話も、今だけは少し遠くに感じられた。
「美味しかったね。」
「うん!げにうまかった!」
私たちは家路に着いた。
かき氷を食べたから、暑さも少し和らいだ気がする。
澄子が誘ってくれてよかった!
「じゃあね!」
「うん、また明日!」
澄子と別れた後、私は空を見上げた。
青くて、どこまでも広い、いつもと同じ空。
でも──
「……なんだか、今日は少しだけ、遠く感じるな。」
この広い青空の向こうでは、悲惨な光景が広がっている。そのことを、私は少しだけ身近に感じてしまった。