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グングンと、俺の身体は阿鼻地獄の底へと落ちていった。
だけど、妹の弥生の姿はまだ見えない。
まだ、底へ向かっている。
真っ暗闇だけど、そのことだけはよくわかるんだ。
とても静かだった。
俺の身体が落下する音すらしない。
まるで、闇に音も吸い込まれるかのようだ。
「あーーー!! いた!!」
目を凝らして、下方を見ていると、真っ暗闇の中だというのに、弥生の輪郭が浮き出ているところを発見した。
落ちる。
落ちる。
落ちる。
届いた!!
「弥生!!」
「兄貴!!」
両手で弥生の両腕を握った。
お互いにお互いの姿も見えないのだけど、涙声だった。
「兄貴! どうしてここまで?!」
「俺は、お前を家に連れ戻しに来ただけなんだ!!」
俺たちはそのまま両腕を握り合いながら、そのままの速度で落下していった。
グングンと落下する。
「……」
弥生が俺を無言で見ているのが、感覚としてわかる。
いや、何か言っているのかも知れないけど、まったく聞こえないや。
その時、淡い光が弥生を包んでいく。
暗闇の中でも、弥生の姿が。私服姿の弥生が見える。
その後は、ニッコリ笑った顔を残して、弥生の身体が徐々に光の中へと消えていった……。
俺は急に浮上していく。
何かの力で、グングンと……どこまでも……。
―――
「火端さん? お願い目を覚まして」
「うん?」
気がつくと、洞穴の地面に横になっていた。
音星の背後には、大海原が広がっている。
「あ、悪いな……膝枕……」
「いえ、いいんですよ。それより火端さん青森県の私の家へ遊びに来ませんか? 家族を紹介したいのです」
「ああ、いいぜ」
「弥生さんの身体。ここから見ていても光っていましたね」
「そうなのか?」
「ええ」
「弥生はきっと転生したんだろうなあ」