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_ヒナは、目を覚ます。
それが光とはいえないが_橙色の淡い光と、左手に感じる温もりが、ここを現実だと思い出させてくれる。
「…ヒナ!!!」
最初に叫んだのは、ルカだった。
「…ルカ兄…」
「もう…自分が託したくせに、心配しちゃって。」
「…っるせ、心配くらいするだろバカ!」
ヒナは笑った。
「…はは、こんな面白かったっけ、ルカ兄って。」
失笑混じりのようにも見えたが、確かに彼女は、心から笑っていた。
見回すと、めめと、菓子もいた。
ヒナは菓子の方に手を伸ばす。
「ごめんね、心配かけちゃって。」
菓子は、潤んだ目で問いかけた。
「も、もう…こわいヒナさんじゃないですか…?」
ヒナは答えた。
「大丈夫だよ、もう能力は使わない。」
「もう悲しんだりも、してないからさ。」
「…ほんと、ですか?」
菓子は不安げに聞いてきた。
ここまで不安にさせてしまったことに申し訳なさを覚えつつ、寝転んだまま、菓子の頭を精一杯撫でた。
「…ほんと、妹みたいで可愛いなぁ…。」
ヒナは菓子を撫でながら、そう呟いた。
「か、かわ…!?」
菓子は驚いた。
「うんうん。」
ルカは少し困惑した様子でヒナを見つめた。
「ど、どうした?今日。」
「…よ、酔った!?いつの間に!?ワインでも飲んだ!?」
「えぇっ!?ヒナさん倒れてたのワインだったんですか!?」
そんな様子の2人に対し、ヒナはバッと起き上がり必死に否定した。
「違う!違うって!!」
「…色々あったんだって!」
言葉に詰まりながらもヒナはそう言った。
「ほんと、説明が難しいんだけどさぁ!色々!あったんだって〜!!!」
ヒナはぺしぺしとルカを叩いた。
めめは1歩引いた場所で立ち、困惑しながらもどこか微笑ましさを感じていた。
そして静かに、この場を離れようとした。
_邪魔をしてはいけないと思ったのだ。
_あそこは、もう3人が揃った日常という、ひとつの幸せな空間だからだ。
菓子はそれに気がつくと、あっと呟き、めめの元に駆けた。
「え、えと…!ありがとう、ございました!」
そんな菓子に2人も気がつくと、慌てて立ち上がりめめに頭を下げた。
「茶子のことから、これまで…本当にありがとうございました!!」
「このご恩は一生…いや!タヒんでも!忘れません!!」
「…あ、あはは〜…」
めめは困ったように笑った。
「…ま、まぁ…大丈夫ですよ、うんうん。」
「…な、何かあったら頼って…大丈夫ですからねーあはは〜。 」
(…ササッと立ち去った方がいいですよねこれ!!?)
めめから流れる汗には気まずさが滲み出していた。
「…そ、それでは〜!」
「はいっ!!」
3人の元気な返事にめめはますます気まずくなり、館のどこかから飛び降りて去っていった。
(…ん?)
3人かましばらく固まり、顔をゆっくりと見合わせたのち、ルカはめめに対し叫ぶように言った。
「…えっ、今2階から飛び降りてましたよね!!??」
_まぁ、それにめめが答えることはなかったのだが。
「…おっほん、えーっと…?」
ルカの思考が全て飛んだようで、こめかみに左こ人差し指をあてた。
「…あっそうだ、ヒナはなんでなんか…楽しそうなんだ?」
「あっ戻る!?戻っちゃうんだ!?」
「えーっと…違くて…」
「…ち、ちっちゃい私と〜、会っちゃったんだよね〜!?」
そう言うヒナを見て、2人は口をあんぐりと開けた。
_菓子も加わった、懐かしさすら感じる空間だった。
館のことなんて忘れるほど_ここから直で差し込む、夕陽すら忘れるほど_楽しかった。
ここは、あたたかいから。
そうして、3人分の笑い声が、夕陽の下に響いた。
___
「えっと〜、じゃあ、これからどうする?」
_この場所でずっと暮らす訳にもいかないので、3人は話し合うことにした。
そう言うヒナに、ルカは軽いノリで提案する。
「え〜?館建て直す?」
「え、それってそんな簡単にできるんだ!?」
ヒナは驚いた。
「おぉい!?仮にも財閥だぞここ!?」
「プサ・ユンゲス財閥は結構ちゃんと金もあるからな!?」
菓子はそんな2人を見て、楽しそうに笑った。
「あはははっ!…けど、その間ってどうするんですか?」
2人はその言葉に、はっとした表情となった。
そして、ヒナが少しの沈黙ののちに発言した。
「んー……新しい家でも探す?」
「仮の家ってことか…まぁいいんじゃないか?」
「うーん、でも、生き残ったメイド達も住めるようにしたいから…」
ヒナは夕陽を見上げた。
「結構大きい家を探さないとな〜。」
菓子も幼いながらに、必死に考えた。
「うぅん、でも…ほんとうにありますかね…?」
「…菓子ちゃん、何か心当たりはない!?」
ルカは聞く。
「反逆があっても壊れなさそうなくらい頑丈で、おっきい家!」
「ええっ!?」
菓子は驚いたような表情をすると、少し考えた。
「うーん…………。」
「…わ、わたしがすんでいたところ、行ってみますか?」
そう提案する菓子に、2人は少し心配そうな表情をした。
「…大丈夫なの?本当に。」
「危険なことがあったら…」
「だいじょうぶですよ!」
「そのときは…”ふたりが”守ってくれるじゃないですか!」
そう言って笑う菓子が、2人にはなによりも輝いて見えた。