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安らかなひとときの中、ふと思いついたことがあって、女の子の結を抱っこしていた私は、彼にまた「ねぇ、」と呼びかけた。
ソファーで男の子の誓をあやしてくれていた彼が、「どうした?」と、首を傾げて応える。
「パパとママと、どっちを先にしゃべってくれるのかなって」
子どもたちは、そろそろ十ヶ月になろうとしていて、片言でも話しそうな気配があった。
「そうだな、君と接している方が多いだろうから、やはりママが先なんじゃないか」
彼の答えに、「うーん、だけど……」と、言いよどむ。
「結も誓も、私とおんなじであなたのことが大好きなんだもの。だから、パパの方が先かも」
微笑って言い、「……ね?」と、抱いている腕の中へ呼びかけると、結は返事をするみたいにキャッキャと笑って見せた。
「ほら、結もそう言ってるもの」
「では、誓にも訊いてみようか」
彼が膝で遊ばせていた誓に、
「ママと、最初に呼びたいだろう?」
そう尋ねると、誓も結と同じように楽しげに笑った。
「うーん、これは、どちらかわからないな……」
大まじめな顔つきで眉間にしわを寄せて考え込む彼に、クスリと笑ってしまう。
「でもどちらでも、うれしいですよね」
クスクスと笑ったままで応える。
「ああ、どちらだろうとうれしいのに変わりはない」
彼が顔をほころばせて返して、私の額にチュッと口づける。
「あっ……」
熱くなるおでこに片手を当てがい、はにかんで下を向くと、
目の合った結が、「ま……」と、ふいに口を開いた。