テラーノベル
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「あ、今、”ま”って……」
もしかして喋ってくれるのかなと、そのつぶらな瞳を覗き込む。
すると結が、私をじっと見返して、「まーま」と、口にした。
「ママって……確かに」
初めての言葉に、得も言われぬ感動が込み上げるのを感じていると、
「ああ、ママが先だったな……」
彼もじんとしたように、目を優しげに細めた。
──と、誓がちっちゃな手で貴仁さんの胸を叩いて、気を引いたかと思うと、
「ぱーぱ」と、時ならず口を開いて、
二人して驚きのあまり、顔を見合わせてしまった。
「誓が、パパって……」
目頭が熱くなり、つと涙がこぼれ出る。
「ママに、パパも、どちらも言ってくれたのか……」
薄っすらと彼の目も潤んで映る。
「……幸せだな。本当に」
彼の呟きが、胸に沁みるように響く。
「はい、本当に幸せ……」
同じようにもくり返すと、
「この幸せを、抱きしめさせてほしい」
抱えている子どもたちごと、両腕に抱き寄せられて、
こうして、いつまでもずっと心安らぐ家族でいたいと、抱かれた温かな腕の中で、切に思い入った……。
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