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テラーノベルの小説コンテスト 第4回テノコン 2025年1月10日〜3月31日まで
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「――う……んん」


意識を閉ざしてから、どれくらい眠っていたのだろうか。どうやら光とともに母に会えたらしいが、どんな姿だったのかさえよく覚えていない。


母の名を冠したアーマーが覚醒したが、これで忘れ去られたシリーズが全て揃ったということなのだろうか?


錆びた剣は未だに錆びた状態のままで装備袋に入れっぱなしだが。だが、これで国を再建することが出来そう。


エルメルアーマーのスキルでも気付いたが、どうやらおれは水属性に縁があるらしい。そのせいか分からないが、さっきから顔にポタポタと水が滴《したた》り落ちてきている。


まさかとは思うが、眠っている最中に雨でも降ってきた?


そう思いながら意識を戻すと、


「ア、アック様、アッグざば~目をお覚まし下ざいいいい~……!!」

「ウニャウゥゥ……アックがいないと、シーニャ、悲しいのだ……寂しいのだ……」

「キサマ! 我を残して早くも未亡人とさせるつもりか!! 我は許さぬぞ! 聞いているのか、キサマ!!」


ルティとシーニャ、サンフィアの三人の悲痛な声が聞こえている。恐らくおれの顔に滴り落ちているのは、ルティの涙だ。相当な涙を流しまくっているとみえるが。


しかし一体なぜそこまで悲しんでいるのか。フィーサには特に説明をしていなかったがそれが仇となってしまった?


彼女たちのすすり泣きと泣き声を聞いている限り、早とちりで悲しんでいるように聞こえる。とりあえず目を開けようと思っていたが、体力の消耗なのか上手く起き上がることが出来ない。


それなら今は大人しく眠る。そうするしかない。


◇◇


「うぐっぐずっ……どうすれば~どうすれば~」

「ア、アックの体が冷たいのだ! シーニャ、アックを温めるのだ!! ウニャゥ」

「えっ?」


まだルティは泣きじゃくっていて、シーニャは何かの行動を起こすらしい。どれくらいの時間が経ったのかが不明だが、大げさにしすぎなのでは。


「むむぅぅ……」


首元から上半身にかけてモフモフとした感触が継続している。そうかと思えば、顔には相変わらず大量の水滴が落ちまくりだ。


いい加減目を覚まして起き上がらないとまずい気がする。


「のわっ!?」


目をうっすら開けると、何故か目の前にヒゲがあってくすぐったい。胸元にはシーニャが乗っかったまま、離れずにくっついている。視線を頭上に移すと、そこには滝のように泣きじゃくっているルティの顔があった。


「アック、アック! 生き返ったのだ!?」

「へ?」

「ア、アァァァァァァ、アッグ様、アッグ様~!! あうぅ~良かった、良かったです~」


二人とも何を言っているんだ?


とにかく起き上が――れないくらい、シーニャが顔をこすりつけてくる。


「フニャン……まだ起きたら駄目なのだ」

「む……むむぅ」


永遠のモフモフは確かに捨てがたい。だが同時に、ルティの涙がずっと落ちまくりだ。こうなれば強引にシーニャを抱えたまま上半身だけでも起こすことにする。


「ウニャ~? 起きるのだ?」

「そのままでいいよ、シーニャ」

「ウニャ!」


ルティの顔しか見えていなかったが、空を見上げると夜になっていた。せいぜい数時間程度のはずなのに、周りから聞こえてくるのは賑やかな声だ。


「おれはどれくらい眠っていたんだ?」


ルティは答えづらいのか、首をかしげている。


「え、えっと~」

「シーニャ、ずっとアックの傍にいたのだ。時間なんて分からないのだ」

「わ、わたしもアック様の顔しか見ていないです」

「そうなのか……。近くにミルシェはいないのか?」


時間も忘れて悲しんでいたのか。


「ミルシェさんなら、獣人たちとエルフさんたちと話をしていますよ」

「フィーサは?」

「知らないのだ。アックが起きなくなってからどこかに行ったのだ」


眠っている間に色々動きがあったみたいだな。


「……ラーナはどこだ?」

「カエルの子でしたら戻っていますよ」

「戻……あぁ、そうか」


霊獣の類は言葉なんて要らないということだろう。


「びっくりしましたよ~! すごい光に包まれたと思ったら、アック様がどんどん冷たくなっていくんですから!! もう本当に、どうすればいいのか分からなくて……」

「ウニャ。ドワーフはアックに水をかけすぎなのだ!」

「手当たり次第の回復水をかけまくれば目を覚ましてくれるかと思って~」


母に会えたあの光は、実は危なかったということか。全然苦戦もしてないし、魔力も体力も消耗していなかったからな。


「なるほど、そうか……それは助かった。ありがとうな、ルティ。シーニャも!」

「と、とんでもないです~!」

「ウニャッ!」


落ち着いたところでシーニャを抱っこして、おれはすぐに立ち上がった。周りを見回すと魔物の屍骸は既に無く、離れた所に獣人たちが集まっている。


「あ! お目覚めですわね! アックさま、もう大丈夫です?」


起き上がったおれに気付いたミルシェが、駆け寄って声をかけてきた。


「ミルシェ! どうなってる? おれはどれくらい眠っていて……、今は何時だ?」

「……ええと、アックさまは十日ほど眠っていましたわ! 今は夜の八時といったところですわね」

「と、十日……!?」

「ええ。アックさまは眠られていましたけれど、この国に帰着されたことで状況が一変していますわ!」

「帰着でか……」


何もかもおれの帰りで変わったわけか。


「とりあえずお食事の準備が出来ていますわ。落ち着いたら、その子たちと一緒にあたしに声をおかけくださいませ」

Sランクパーティーから追放されたけど、ガチャ【レア確定】スキルが覚醒したので 、好き勝手に生きます!

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