テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
2件
みぅです🤍🥀 第5話、読ませてもらいました。 走るシーンの切なさと、幻でも「ずっと友達だよ」って言えた瞬間、すごく胸にきました。桜の木の下で約束した場所にたどり着く流れも、優しくて泣きそうになりました。お父さんお母さんの電話でふっと力が抜ける描写も、あじさい。さんの言葉の繊細さが光ってました。続き、気になります…!
電話を切った後
何だかさっきより清々しく感じる景色
夕焼け雲が建物を横切り
オレンジがかった空色を俺は見上げて
考える
俺にとって
はやとくんは特別な存在なんだろうか、
友達とかじゃなくて
本当に離したくない手放したくない
そう思ってたんだろうか
わからないな。自分のことなのに、どうして
こんなに他人事みたいに思えてしまうのだろう
あの綺麗な瞳には俺はどんな風に映っていただろうか。
、本人に聞かなきゃわからないことばかり考えてしまう
俺も俺だなぁ
さぁそろそろ帰ろうか
一度区切りを入れてまた前を向いて歩く
少しだけ気持ちが軽くなった
そんな気がしたようなしなかったような。
歩きながら周りを見渡したりすると
あのクレヨンで描いた景色を見つけたりする、
ここの電柱をはやとくんが描いて
ここの道路を俺が描いたりして
僕は〇〇係!俺は〇〇係!って役割分担したりしてたな
出会った場所も、さよならした場所も
病院の中なのにどうして外まで思い出が溢れてるんだろう
病院の窓から見える景色を描いてそれを見せて
…確か一枚くらい俺が持って帰りたいって言って持って帰ったっけな?
もしかしたら家にあるかも、
そうほんの少しの彼との思い出の品が見れるかもしれないと思うだけで
気づけば俺の歩く速度は上がっていき
じきに走っていた
久々に走るせいかすぐに息が上がる
肺が締め上げられるような痛みが俺を襲う
まるであの時みたいに
それでも無我夢中に走った
痛くても関係ない、今は俺は走らなきゃいけないんだ
小さい頃に見た色味の悪い病院の廊下が目に浮かぶ
本当にそこを走ってるみたいだ
横を見ても病院でしか見ない色の壁、
チカチカする電気
つるつるだけど少し汚れてる
こういうことってあるんだな。
なんてまた他人事みたいに考える
そして目の前を見ると
はやとくんが立っている
俺の記憶では何かの台かで運ばれていたはず
なのになんで?
疑問に思うけど久々にこうしてちゃんとはやとくんを見れて
嘘でも幻覚でも見れたことが嬉しくて
俺はようやく少しスピードを落として立ち止まった
目の前にはあの頃と全く変わらないはやとくん
でも何だか、
何か変わった気がする
いや
変わったのは俺か。
はやとくんはただ微笑むだけで何も言わない
ここが現実じゃなくても俺はこの子に伝えたかったこと
「…ずっと友達だよ」
気付けば口に出ていた
それなのに声は震えてもいなくて
41
2,894
nanana
3,230
ちゃんと、話せていた
昔みたいに
俺の言葉にはやとくんはわかってたみたいに
また子供らしくない切ない顔をして
でも今度はちゃんと俺の目を見てくれている
「うん」
はやとくんの声が俺の鼓膜に深く響く
その時
ちらちらと葉のようなものが周りを舞っている
これは…何の葉?
と葉に一瞬だけ気を取られていたら
気づいた頃には病院もはやとくんも消えて
ただ大きな木が俺の目の前に立っていた
周りを見るとフェンスや綺麗な川
そしてこの大きな木
この木の葉は
さくらだ。
はやとくんの言葉がまた俺の脳内に呼びかけるように蘇ってくる
あの時彼はなんて言っただろうか?
「あのさくらのきのしたのちかくにはね」
「うん」
「かわがあって、なみなみがあってね!」
「うん!」
「すごくすーんごくきれいなの」
「ぼくもいつかいきたいなぁ」
「おれのびょうきがなおったらいっしょにいこう!」
「…うん!!!」
「「約束」」
ここがあのはやとくんのお気に入りの場所
綺麗なオレンジ色の空と
心地よい気温と差し込む光
キラキラと光る川
そしてまだ咲いてはいないけど大きな桜の木
…そっか、ここ、確かに綺麗だね。
はやとくんはよくここにくるって言ってたなぁ
歩けるなら足の病気じゃなさそうだし
何の病気だったんだろう
わからないままこんなにも時が経ってしまった、
ちゃんと聞けばよかったのかな
でも聞いたってってところな気もする
「はぁ、」
考えてると疲れるな
俺は走ってクタクタになった体を休めるために
さくらの木下に腰を下ろす
木が背もたれになってそこに力無く寄りかかる
優しく受け止めてくれているかのように風が吹く
走って汗をかいたおでこをすぅっと通り抜ける、ひんやりとして気持ちがいい
ここで、はやとくんも絵とか描いたり
もたれかかったりしたのかな。
…はやとくんとここにきたかったなぁ
そんなの叶うわけないけど
薄い木漏れ日に当たりながら休んでいると
またスマホが揺れる
あ、そうだ俺家に帰らなきゃ
俺は慌てて立ち上がり電話に出る
『もう帰ってきたけど、ご飯作っていい?』
「うん、すぐ帰る」
『いいのよゆっくりしなさい』
『そうだぞーゆったりまったりするべきだ!』
『あなた!うるさい笑』
お父さんとお母さんの笑い声が聞こえる
それだけでふっと体から力が魂が抜けるような感じで抜けていく
そうだこの人達こんな人だったな
わかってたけど忘れてた、
なんか心なしか嬉しくなったような
安心したような
またわからないけど
これはわからないままでいいのかもしれない
「じゃあ、7時には戻るから」
『はーい、気をつけてね』
「うん」
電話が切れる
いつもこういう時ってどっちから…いや
うちに限ってそんなことしないか
何だか笑えてくる
この何気ない会話も面白くて楽しくて仕方ない
俺はまた腰を下ろしてもたれかかる
…こうしていつか、
それがどれだけ先になってもいいから
はやとくんと、この桜の木下で
いつかまた昔みたいにお話ししたいな
「また会いたいよはやとくん」
そう1人ぽつりとぶやいた