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#年の差
水無月 京
624
おむすび
5,220
さらに時間が流れた。
彼の家庭の問題は、彼自身が責任を持って
進めていった。
そして、ある日。
彼から、これまでのことについて報告を
受けた。
長い話し合いの末、彼は結婚生活にひとつの
区切りをつけることになったのだった。
それまでの道のりは、決して簡単では なかった。
だから私は、彼がその決断に至るまでの時間を、軽い言葉で片づけたくなかった。
ただ、彼が自分の人生と向き合ったことを、
ひとつの事実として受け止めた。
その後も、すぐにすべてが変わったわけではなかった。
これまでのことを整理する時間も必要だった。
私たちは、焦らずに話す時間を重ねていった。
ある日、彼から会いたいと言われた。
待ち合わせ場所は、以前、仕事終わりに
ふたりでよく話していた場所だった。
そこに立つと、いろいろな思い出が
よみがえった。
初めて仕事の相談をした日。
社員旅行の帰り。
寒いと言った私に、上着を貸してくれた夜。
仕事を辞めたあと、彼の実家で話した日。
そして、連絡が途絶えて、もう会えないと
思った夜。
どの思い出も、私にとって大切なものだった。
彼がやって来た。
「待った?」
「ううん。今来たところ」
私たちは、並んで歩き始めた。
以前と同じような会話。
以前と同じような笑い声。
だけど、今は違った。
私は、彼の気持ちが分からないまま、ひとりで不安を抱え続けていた頃とは違う。
彼も、自分の状況を曖昧にしたまま、私に期待だけを持たせるのではなく、自分の言葉で話そうとしていた。
しばらく歩いたあと、彼が言った。
「これからのこと、ちゃんと考えたいと思ってる」
私は彼を見た。
「俺も、今までいろいろあったし、すぐに何もかも変えられるわけじゃない。でも、これからはちゃんと向き合いたい」
私は、ゆっくりとうなずいた。
「私も、自分のことを大切にしながら、一緒に考えていきたい」
その言葉を聞いて、彼は少し笑った。
「うん」
たったそれだけの会話だった。
でも、私は嬉しかった。
誰かに選んでもらうことだけを願っていた頃とは違う。
自分の気持ちを伝え、自分の希望も大切にしながら、これからを考えていける。
それが、今の私たちに必要なことだと思った。
そして、その日から、私たちは少しずつ、
新しい関係を築いていくことになった。
急がずに。
無理をせずに。
お互いの気持ちを言葉にしながら。
あの頃のように、ただ会えることだけを願うのではなく、ふたりが安心して一緒にいられる
未来を考えながら。
コメント
1件
おお…このエピソード、すごく丁寧でじんわりくるわね。彼が家庭の問題と向き合って区切りをつけて、そこから焦らずに話し合いを重ねていく過程が、言葉のひとつひとつに重みがあってさ。特に最後の「急がずに、無理をせずに、お互いの気持ちを言葉にしながら」って部分、めちゃくちゃ沁みた。選んでもらうだけじゃなくて、自分の気持ちも大事にしながら進んでいく関係、すごくいいと思う。これからどうなるのか、安心しながらも気になるなあ🔥