テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
文化祭の件で、完全に公認になった俺たち。冷やかしはあるけど、まあ想定内。
でも――
数日後。
廊下で見かけた
及川徹 は、
妙に、元に戻ってた。
女子に囲まれてる。
笑ってる。
前みたいに。
軽い声。
軽い距離。
胸が、ひやっとする。
“断った”んじゃなかったのか。
近づく。
気づいた及川が、一瞬だけ表情を変える。
でもすぐ、いつもの顔。
「岩ちゃん」
柔らかい声。
「何?」
低くなる。
「なんか怒ってる?」
とぼけるな。
「さっきの何だよ」
視線を女子たちに向ける。
「あー」
軽く笑う。
「文化祭で公表しちゃったからさ、逆に距離戻さないと変に気遣われるかなって」
意味が分からない。
「……は?」
「俺、岩ちゃんの彼氏ってだけで世界狭めたくない」
言ってることはまとも。
でも。
「だから普通にしてるだけ」
普通?
あれが?
「俺、ちゃんと線引いてるよ」
確かに触れてない。
でも距離は近い。
笑顔は甘い。
胸が冷える。
「信用してない?」
静かに聞かれる。
刺さる。
「……してる」
即答できない自分が嫌だ。
及川が少し笑う。
でも温度が低い。
「岩ちゃんさ」
視線が真っ直ぐ。
「俺の過去、まだ怖い?」
黙る。
否定できない。
その沈黙で、空気が変わる。
「そっか」
小さく頷く。
「じゃあ俺、何やってもダメだね」
その言い方が、冷たい。
「努力しても」
目が少し遠い。
「結局“元の俺”に見えるなら」
胸がざわつく。
「そういう意味じゃねぇ」
「どういう意味?」
淡々と返される。
言葉が詰まる。
及川が息を吐く。
「俺、ずっと疑われるなら」
視線が外れる。
「少し疲れるかも」
心臓が強く跳ねる。
「……疲れる?」
「うん」
笑わない。
「好きだけど」
その“けど”が冷たい。
「信じてもらえないのは、しんどい」
沈黙。
文化祭の勢いとは真逆。
温度が下がってく。
「俺、変わろうとしてる」
静か。
「でも岩ちゃんが変わらないなら」
目が合う。
その目は、怒ってない。
諦めに近い。
「距離、考える?」
その一言で、血の気が引く。
“距離”。
別れる、とは言わない。
でも。
冷たい。
今までで一番、冷たい。