そんなある日、渡辺に引き抜きの話が持ち上がった…
条件は、勿論この学校より好条件
給料だって勿論上がるし…待遇だって抜群に良い
「………」
しかし、そこには彼が居ない
それが最大の難点で、それが満たされなければ意味がない…
返事は保留にしてもらい
これは良い機会かもと、渡辺は準備室に涼太をLINEで呼び出した
「えっ…この学校から異動する?」
渡辺から聞いた事実に、涼太は驚きを隠せない
「うんそう。だから涼太には、その事先に伝えておこうと思ってさ…」
サラリと言う渡辺に、涼太はどう答えたら良いのか分からない
「それで、あの…俺は、どうしたら…」
分かりやすく動揺する涼太に
「涼太は、このままだよ。生徒なんだから」
そう伝えると、困惑した様な表情になる
「涼太はこれで、良かったでしょ?これで、授業にも集中出来るし」
元々、美術は…そっち系の専門学校でも行かない限り
受験には関係ないので、難しく考える事はないのだが…
ワザと棘のある言い方を…あえて涼太に投げかけてみた
「なんでそんな事…」
ショックなのか、涼太が驚いた顔で渡辺を見る
「涼太、俺が強引に付き合おうって言ったから…。渋々付き合ってくれてる所…あったよね。だから、この際…それもハッキリさせておいた方が良いと思って」
渡辺がそう言うと、今度は不服そうな表情に
「だから涼太。本当は、俺の事どう思ってるの?この関係…まだもし続けたいなら、10秒数える間に俺に触れて…。終わらせたいなら、そこでただ見てれば良いよ。そしたら何にも言わず、俺の方から別れてあげる…。来月からは、転任するから…負目なんて追わなくても良いし。涼太にとっては渡りに船って感じかな」
珍しく、投げやりな様子の渡辺に
涼太の瞳が淡く揺れた
「大丈夫。これが最後の質問だ…。これがNOなら、俺は二度と君に触れたりしないから…」
そう言って、苦笑いする渡辺
「そんなのズルい…。全部、俺に決めさせるなんて」
涼太は今にも泣き出しそうだ
「そうだよ、俺はズルいんだ…。だから最後は君が決めて…。俺と共に歩むのか、それとも…それぞれ別の道を進むのか」
ここで君に拒絶されれば、もうここには居られない
引き抜きされた学校だって…実は、行く気はさらさら無い
次は、全く別の職種を探そうか…
今から職探しなんて、笑えない冗談だが
全部、それは本当の話…
後は、彼の気持ちを尊重し
2人の未来を委ねよう…
それが例え駄目になっても、俺は彼を恨んだりはしない
何処か俺の知らない場所で…幸せになってくれれば良いと
渡辺は、真っ直ぐ見つめて口を開く
「1…2…」
そして、ゆっくり数をかぞえ…
全く動かない涼太を見つめ
諦めた様に微笑んだ
「3…4…5…」
『これで良い。もうこれで、俺の恋は終わるんだ…』
例え、生徒と教師の間でも…男同士の恋だとしても
俺は…涼太を愛してた
「6‥7…8…9…」
目を伏せ視線を動かすと…
頬に一筋の涙が溢れた
「10」
それが、誰かに拭われて…
視線を上げると、涼太が見えた
「そんな顔して泣かないでよ…。俺が離れられなくなるだろ…///」
そう言った涼太の瞳も潤んでいて
俺は、その身体をグッと抱き寄せた
「悪いけど、もう絶対離さない。今更、間違えたって言われても…もう逃さないから、そのつもりで」
そう言った渡辺は、顔を傾け唇を奪う
「良いよ。もう俺も覚悟を決めた。だから、ここに居てくれよ」
涼太も、真っ赤な顔してそう伝え…
晴れて本当の恋人に
おままごとの様な、清い関係も…焦ったくて良かったが
俺は、涼太に触れたかった
「これから、色々教えてあげるね…」
「っ…!///」
そう耳元で囁くと、涼太は肩を揺らして動揺したが
俺の背中に回した両手を…離す事はしなかった
コメント
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始めは、しょっぴーから言い出して始まった関係だったけど・・異動の話があって、本当の気持ちを確かめあって本当の恋人同士になれて良かったです😭😭 最後に、10カウントするところで・・結末がわかっていても、なんだか切なくなり泣けてきちゃいました・・❤️ 素晴らしいストーリーをありがとうございます😊
