「あぁ…寒っ…」
駐車場で、マネージャーの運転する車から降り
ほんの一瞬…外気に触れるだけでも
最近は、寒く感じる様になって来た…
「暖かかった、あの頃が懐かしいよ…」
まるで遠い昔の事の様に、遠い目をして渡辺が言う
「しょっぴー…それ、まだ最近の事やから。これから、もっともっと寒くなっていくんやし…今から、それだと身が保てへんで…」
一緒に車に乗っていた向井が、呆れた様にそう言って…
その言葉を聞いた渡辺は…不満そうに頬をプクッと膨らませた
「でも、そんなに寒いなら…俺が中から温めて…///」
その後、向井が不道徳な事を言い出したので
一旦、顔を背けて視線を逸らす
その時、急に背後から
「ほら翔太…俺が温めてあげるから///」
向井と同じく同乗していた岩本が…自分のコートの前を開け
その中に、渡辺の身体を入れて…包み込む
「照、ありがとう。暖かい///」
「それなら毎日、やってあげる///」
突然、イチャイチャし始めた2人を
今度は向井が、不満そうに見つめている
「何やってるの?早く行こ!」
目の前の事務所に入れば寒くないと
4人目の同乗者である阿部が、止まったままの3人に声を掛けた
「あぁ…確かに。間違いない」
渡辺は、岩本のコートを抜け出して
阿部に着いて事務所の中へ…
その背後には、コートの前を開けたままの岩本と
今だ、不満そうな向井が立っていた
「はい翔太…。暖かいよ///」
阿部は、自分の服の中からカイロを取り出して
渡辺の前に差し出した…
「ん。ありがとう、暖かい///」
それを頬に当てながら、蕩けた顔で礼を言うと
「今日は、寒くなるって分かってたし…。翔太の為に、温めておきました///」
さすが気象予報士と言うべきか…
その辺のチェックは抜け目が無い
「ん〜阿部ちゃん、流石だよ〜///」
骨抜きにされた渡辺は、有り難そうに微笑んだ
こうして4人は事務所に入り…
楽屋に向かって歩き出す
しばらく歩くと自販機の前に立っていた佐久間と出会い
「翔太。これ飲む?」
そう言って…佐久間は
今、自販機で買ったばかりのコーンスープを差し出して来た
「佐久間、本当?貰って良いの?」
「良いよ。俺はまた買うし…。よし、楽屋で一緒に…コレ飲むか」
そう言った佐久間は、直ぐにもう一本購入し
渡辺を早く行こうと促した
「良いね。行こ行こ。先行くね〜///」
阿部にカイロを差し出して
一言【ありがと】と言って、それを返す
「ほら、翔太。早く行こ///」
佐久間は手を取り、引っ張って行き
「分かったから、引っ張らないの」
渡辺は、笑ってその後を付いて行く
そのまま楽屋に着いてドアを開けると
中には、すでにメンバー達の姿
「翔太君、おはよう///寒くなかった?」
目黒が渡辺に声を掛けて来る
「凄く寒くて、大変だった…」
「翔太君、寒いの前から苦手だもんね…」
「そうそう。目黒は良く知ってるなぁ…」
「だって、翔太君の事だから///」
そう告げた、目黒の頬が何故か赤い…
「何それ、ん?コーンスープ?俺も、良いモノ買って来たよ。ほらコレ見てよ…美味そうでしょう///」
そう言って目黒が見せてくれたのは、6ヶ入りのタコ焼きだった…
「これって、今日買ったの?」
「勿論。翔太君と、一緒に食べようと思ってさ…///」
「それなら、目黒も半分飲むか?」
そう言った渡辺は、目黒の前にコーンスープを差し出した
「良いの?///それって‥間接キスじゃ…///」
「大丈夫。目黒が良いなら、問題ないよ」
「それなら、あっちのテーブルで…2人で一緒に食べようよ///」
目黒は椅子を2つ持ち出して
誰も居ない楽屋の隅に、それを運んだ
その時、偶然…ラウールに見つかって
「何それ…。凄く美味しそう///俺が、翔太君にア〜ンってしてあげたいな…///」
そう言って…側に来て、タコ焼きを上から覗き込む
「えっ何?ラウールも食べたいの?」
6ヶ入りのタコ焼きは、3人で分けると2個づつになり…
意外と食べるラウールは…2個では流石に足りなさそう
「良いよ。俺は、遠慮しとく…。2人で分けて食べると良いよ」
俺が抜けても3個ずつ…そんなに変わりは無いのだが
1つでも増えるなら…【良し】としよう
渡辺は、用意してもらった席をラウールに…明け渡し
席を立ってキョロキョロ辺りを見回した
「ん?翔太…どうしたの?席がないなら、ここにおいで///」
宮舘が手招きをしてくれて…
そちらに向かって、歩いて行く
「これ何?涼太の手作りなの?」
宮舘が手にしたスープジャーの中には、並々と注がれた豚汁が…
「これは今朝、少し時間があったから…。サッと、作って来たんだよ」
「凄いね涼太。さすがだね…///」
感動している渡辺は、料理上手の宮舘を
尊敬の眼差しでジッと見つめる
「朝からサッとなんて、絶対俺には無理だから…。いや…時間があっても、元々無理なんだけど…///」
恥ずかしそうに、そう言った渡辺に…宮舘がクルッと向き直る
「それなら今夜、俺の家に…///」
宮舘が、そこまで言葉を言いかけた時
「おはようございま〜す…。あぁ、寒っ…」
深澤が、姿を現して…
手を擦って温めている
「ふっか、おはよう///手が冷たいの?」
突然、表情が明るくなった渡辺が
深澤の方に歩いて行った
「うん。最近、いきなり寒くなったよね…」
「それなら、ほら。手…貸して///」
そう言った渡辺が、深澤の手を取り握り締めた
「これなら、少しは暖かいかな?///」
「うん///凄く暖かい…///」
それを見ていたメンバーは、ふと思う
最近【渡辺がメンバーの誰かと、付き合い出したらしい…】
そんな噂が…メンバー間で、まことしやかに囁かれ始め…皆んな誰の事だか、探りを入れたり
戦々恐々し始めていた
『それが、お前か…【深澤辰哉】』
メンバー達の鋭い視線を一身に浴びて…
深澤は、渡辺の手を握り返した
「やっぱり、ふっかの手…冷たいね///」
「そうかな?それなら、温めて///」
2人は、しばらくそのままキャッキャしながら…手を取り合って
見つめ合っていたのだった
【完】
コメント
9件
争奪戦!堪らないです😍

