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俺はセドリック・レドルガ。

侯爵家次男で、父はこの国の宰相だ。

アーサシュベルト殿下とは幼なじみでお互いに親友だとは思っている。

いまはアーサーの側近として一緒に行動することも多く、また執行部でも中心メンバーとして一緒だ。


俺から見たアーサーは王太子殿下だけあって、なかなか器用になんでも卒なくこなすタイプだ。

剣術でも、勉学でも、公務でも。


そして、世間では皆がアーサーのことを春の殿下と呼ぶ。

小麦の豊穣を彷彿とさせる眩ゆい金髪に、整った容姿。

そして深いグリーンの瞳で微笑めば、春の柔らかい陽射しがパァーと差し込むかのようで、ご令嬢達の憧れの殿下でもある。


でも、本当はあの微笑みにもアーサーの激しい努力があるのを俺は知っている。

帝王学の先生から、毎朝鏡に向かって、10分は笑顔を作れと言われて、10年経った今でもそれを実践し続けているのを知っているんだ。


そんなアーサーが最近、式典後の舞踏会で婚約者であるエリアーナ嬢に見惚れてチラ見したのが原因で、一緒に階段から派手に落ちた。

そこはさすがアーサー。持ち前の運動神経で咄嗟に腕の中にエリアーナ嬢を引き入れて、守りながら落ちた。

俺だったら、マリエルと一緒にズダダダと落ちていたな。


それからすぐだ。驚くようなことを打ち明けられた。


前世の記憶が甦ったと。

真面目で律儀でもあるアーサーが真剣な表情で訥々(とつとつ)と語る様子を見ると、信じれずにはいれなかった。

それはとても笑える話ではなかった。


アーサーが前世で読んだ小説どおりなら、キャロルという女生徒が現れると、エリアーナ嬢が嫉妬で悪役令嬢となっていき、その行動がアーサーに断罪されて、最後は崖から身を投げるというとんでもない話だった。


そして、アーサーは婚約者のエリアーナ嬢と上手くいってなかったと心情を吐露した。

元々、俺が側で見ていてもエリアーナ嬢とは、愛し合っているようには見えなかったが、この国の未来を支えていく者同士、友愛で成り立っていると思っていた。

あのふたりの完璧なまでの王族の微笑みにすっかり騙されていた訳だ。

会話も必要最低限、広がらない、盛り上がらない。

贈り物もしたことがない。

もちろん、エスコート以外でエリアーナ嬢に触れたこともない。

そこまで酷いことになっているとは思っていなかった。

アーサーは3年もなにやっていたんだ。

強がって素直になれなかった?

でも、ずっと好きで好きで拗らせている?

男同士、わからないこともないけどな。

俺にも決められた婚約者マリエルがいるが、そこそこ関係性は築けているぞ。

お互いの恋愛には踏み込まないという紳士協定たるものでいままで恋愛については語らなかったが…

さすがにそれは不器用過ぎるだろう。


なんでも器用にこなすアーサーだけど、上手くいかないこともあるんだと人間らしいアーサーにうれしくもなった。

恋愛だけが不器用って、アーサーらしいとも思えた。


俺はなにがあってもアーサーの味方だ。協力は惜しまない。

そして、アーサーが愛して止まないエリアーナ嬢の危機を救うべく、俺とアーサーは立ち上がった。


まずはエリアーナ嬢と接点作りから始めることにした。

同じ学園に通いながら、いままで接点がなさ過ぎるのも問題だった。

あの階段事故で、利き手を折ったことにし、昼休みのランチと執行部の活動をエリアーナ嬢に手伝ってもらい、とにかく会話をする。


エリアーナ嬢にお手伝いのお願いの手紙をアーサーが心を込めて書き、そっけないが「諾」という返事をもらった時は、これから始まる作戦を胸にアーサーとガッツリ握手を交わした。


エリアーナ嬢と俺はほとんど会話をしたことがなかった。

だから、昼休みに執行部に来てほしいと伝えに彼女のクラスに行った時、初めて間近を彼女で見ることになった。


やや青味がかった白銀の髪に、深い紺色の瞳。色白で線が細く儚げに見える。確か、病弱でずっと南の方にある公爵領で療養していたと聞いている。

3年前に学園入学のために王都に戻ってきた時は、あまりにもの美少女に社交界がざわついたっけ。

それからすぐにアーサーの婚約者に決まった時は、王都中のご令嬢達が荒れに荒れた。

マリエルからもいろいろ聞いたが、エリアーナ嬢に対する令嬢達の嫌がらせは眉をひそめたくなるものばかりだった。

政略的な婚約だと父から聞いている。

未来の王太子妃に決まっただけで、こんなに苦労するもんなんだと同情した。


エリアーナ嬢には申し訳ないが、彼女の良心につけ込んで、利き手が使えないことになっているアーサーの介助を頼み、しかもふたりきりになるように仕組んだ。

初日のランチで、2人きりになることがわかった時のあのエリアーナ嬢の慌てぶりを見て、初めてアーサーとエリアーナ嬢の関係性が希薄なものであると感じとり、この先のことを考えると頭が痛くなった。

悪役令嬢を回避しようと足掻いている公爵令嬢は前世を思い出した王太子殿下に溺愛される

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