この作品はいかがでしたか?
83
この作品はいかがでしたか?
83
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
キッドは、ぽかんとしている俺の顔を見てふっと笑みを漏らす。
「俺と来ねぇか?」
「……お、れは、海賊になる気はない……」
「何だっていい。俺の隣にいればそれでいい」
――お前が欲しい
真っ直ぐに見つめられて、そう言われる。その瞬間、心臓がどくんと跳ね上がった。
いやいやいやいや! 何ときめいてんだ俺!! しっかりしろ!! 今目の前にいるのは俺と同じ男!!! そして勝手に俺のファーストキスをかっさらった男!!
俺はぶんぶんとかぶりを振って雑念を振り払う。
そして、深呼吸をしてからキッと睨むようにしてキッドを見上げた。だが彼からすれば俺の睨みはただの上目遣いにしか見えないのだろう。口角が上がっている。
「俺は今海軍に身を置いている。海兵になるわけじゃないが、さすがに海賊の船に乗ることはできない」
そう断ったのだが、キッドは依然として俺をじっと見ている。その目は草食動物を前にした肉食獣のようなギラつきを放っていた。獲物を見つけたような瞳をしているのだ。こいつ諦めるつもりないな……。直感的に悟ってしまった。
しかし、俺もここで折れる訳にはいかない。どうにかして断らなくては……。言葉を探している俺を、キッドがいきなりひょいと担ぎ上げた。
「はァ!? ちょっ、おいっ! なんだよ!! 俺は海賊にはならないって!!」
「あぁ言ってたな。だが海賊は欲しいものは奪う主義だ。俺はお前を手放す気なんてさらさらねぇよ」
そう言って、キッドは広場から離れて歩き出す。
俺の抵抗などまるで気にしていないようだ。俺は担がれたまま、じたばたと暴れる。クソ力強ェ!!!このままでは本当に攫われてしまう。
うわーん!! 助けてー!! おつるさーーん!!!!!
「キッドの頭、その肩に担いでいるのは?」
「俺のだ」
キッドがそう言うと、クルーがざわつく。でしょうね!! だってキッドが担いでるのあからさまに男だもん!!!! 俺男だもん!!!!
すると、後ろから足音が聞こえてきた。振り返るとそこには白と青のストライプ柄の仮面をつけた男がいた。お、おひょぁ~~~キラーだ~~~
「ようキッド、いいのを連れているじゃないか。どこで拾ってきたんだ?」
「広場の方でな。ジェイデンだ」
「へぇ、いい名前だな」
「俺の部屋に置いておく」
「あぁわかった」
え!? ちょっと待て!! 勝手に話を進めるんじゃねえ!!!
俺は必死に手足を動かして、キッドから離れようとするがビクともしない。それどころか余計にキッドに密着する形になってしまった。