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俺の体に星の欠片の様な結晶が燦々と降り注ぐ。これはアリアがアーシェスを屠ったときと同じ現象。奴の神格を奪い取ったのと同じ現象だ。だが俺には神々、アリアから託された巨大な神格がある。PTの力の底上げの為にも、これは避難していた三人に受け取って貰うとしよう。掌の上で輝く粉々になった神格を持ってアヤ達三人に近づき、それを譲渡する様に三人の頭上に捧げる。3等分だが、その欠片がアヤ、アガシャにディードの体に光の粒子になって吸い込まれていった。三人の力が急激に上昇していくのを感じる。


「父上、よろしいのですか? 私達がこの神格を受け取っても…?」


「ええ、心の奥底で神格が大きくなって力が増していくのを感じます…。しかし、あの蠅はカーズ様が単独で撃破したというのに…」


まあ、普通はそういう反応になるよな。


「いや、俺には多くの神々から託された巨大な神格がある。それにそれを完全に御し切れてもいない。過ぎた力は身を滅ぼすことに繋がる。それよりもPTメンバーの力の底上げの方が大切だ。これから先、あんなのを単独で倒さないといけない状況が来る可能性もあるんだ。それに三人の御陰で更に強く自身の神格を認識できた。そのお礼とでも思ってくれ」


「ふふっ、そういう欲がないところは変わらないね。じゃあ私はありがたく貰っておくね。それでもまだ差は大きいけど」


「さすがにアヤは俺の性分をよく知ってるなあ。まあそういうことだ。俺だけが力を増しても意味がない。PTのみんなが力をつけないと、これから先もっと危険なことが起こることがあるかも知れないしな。ファーレにナギストリアは何処かに姿を消している。また相まみえる可能性もある」


ルクスとサーシャの方を見る。未だに激しい闘いを繰り広げているが、ティミスは半分傀儡の様な状態だ。それに2対1、明らかに二人の方が押している。悪いが少しだけ横槍を入れさせてもらうか。ティミスの見せられている幻覚、そして操られて意識や肉体に命令を出している脳内の部分に|標的化《ターゲッティング》する。こいつは既に裏切者、コウモリな上にアガシャの、過去の俺達の子孫を実験台にしてくれたクズだ。全力で喰らわせてやるぜ!

聖属性と炎の爆発するイメージを神気も一緒に込めてこいつの脳内に全力でぶちかます! どうなろうが知ったこっちゃないしな。


「さあいくぜ! 俺達を愚弄し、アガシャを弄んだ報いを受けて貰うぜ! 喰らえ! |ファンタズム・エクスプロージョン《幻覚よ現実ともに灰燼と帰せ》!!!」


ドゴオアアアアアッ!!!


「ウギアアアアアアアアアアッ!!!」


ティミスの脳内に、頭部に全く遠慮などない大爆発が巻き起こる! そしてそのまま後ろ向きに倒れるティミス。


「なっ? カーズか?」


「脳内にこれ程の爆発を引き起こすなんて…」


「見せられている幻覚の解除と脳内に強烈なショックを与えた。妹のサーシャには悪いが、こいつは完全に裏切者だ。こういう陰でコソコソと悪巧みをする奴はタチが悪いし、大っ嫌いなんだよ。これでそのまま廃人になるか、目覚めて大人しく天界で裁きを受けるかはこいつ次第だ。俺達は魔王にされた二人を追う。取り敢えず後の処理は任せるよ。じゃあ行ってくる」


ルクスとサーシャに告げる。


「おう、こっちは任せろ!」


「カーズ、ありがとう。姉にはいい薬だわ。そっちも気を付けるのよ!」


「ああ、行ってくるよ。また後程落ち合おう!」


ヴゥンッ!!


俺はアヤ達三人を連れて、アリア達の下へと転移した。








「カーズったら、敵と定めた相手には本当に容赦がないわね…。姉の幻覚を解くどころか脳も頭部ごと破壊する威力で撃ったみたいだし…」


「全くだな…。あのピンピンしてる状態のティミスを不意打ちとは言え、一撃で戦闘不能にしやがった。末恐ろしいな、バルゼも単独で撃破するとはな…、天界で初めて会ったときとは最早別人だ。とんでもない成長速度だぜ…。ま、取り敢えずこいつは拘束してオヤジの所に連行するとしよう」


「ええ、そうね……。後は何とでもなるでしょうから」


二人は意識のないティミスを拘束し、天界、ゼニウスの下へと転移した。










魔王とされた龍人族、次代の竜王の二人を、ダカルーは全速力で飛翔して追っていた。だが魔王となったことで神格が目覚め、能力が上昇している二人に中々追いつけずにいた。


「マズいのう…。このままでは神格者とは言え、まだ|神衣《カムイ》を纏うことができぬ者達の下に先に到着されてしまう…。致し方ない…、多少の怪我は覚悟して貰おうかの…」


ダカルーの両手に闘気と僅かに神気が籠められていく。


「赦せ、我が子孫達よ! |豪龍波《ごうりゅうは》!!!」


ボボッ!! ドゴオオオッ!!!


ダカルーの両手から、それぞれ2つのドラゴンを|模《かたど》った闘気のエネルギー波が兄妹に向けて放たれる!


ギュンッ! ギュインッ!!


しかし空中で旋回してその攻撃を躱す二人。


「躱しおったか…。だが|豪龍波《ごうりゅうは》は儂の魔力で当たるまで相手を追尾する。そしてこれで合計4発じゃ!」


ドドゥッ!!!


躱した最初の2発が方向を変え、更に放たれた2発がアジーンとチェトレを捕らえる!


ドゴオオオオオオン!!!


「グガアアアア!!」


「ウガァッ!!」


多少の足止めにはなったものの、|龍闘衣《ドラゴローブ》を纏い、強力な神気を放っている兄妹にとっては然したるダメージにはなっていない。それに無意識に、子孫を攻撃することに手加減をしてしまっている自分がいる。

殺す訳にはいかない。だが堕天神共の謀略だとしても、次代の竜王の二人をこのまま世に放ってしまっては、事情はどうあれ世界の危機。竜王の末裔末代までの汚点となろう。二人の飛翔する前方へと転移し、行く手を塞ぐ。


「良かろう…、心ゆくまで稽古を付けてやろうぞ…」


初代竜王による誇りを賭けた闘いはこうして幕を開けたのだった。








シュンッ!!


「アリアさん?! 魔王に堕天神共はどうなったんだ?」


単独で防衛組の下へと転移して来たアリアにエリックが尋ねた。


「魔王の二人は此方へ向かっています。今はダカルーが単独で足止めをしていますが、自らの子孫達。本気で拳を交えるのは難しいでしょうね。私はカーズに頼まれて魔王の呪縛を解きに来ました。そしてジャンヌ、あなたの力が必要になるでしょう。私も迎撃に向かいます。ヨルム、そのままジャンヌを運んで来て下さい!」


「うむ承知した、女神アストラリアよ」


「私達も行くわ! アリアさん!」


「ボクも行きたいのさー、雑魚続きで退屈してたのさー」


「勿論、俺も行くぜ!」


「しゃあねー、ナギトの頼みだ。祭りには参加しねえとな」


ユズリハにイヴァリース、エリックとバサトも口々に思いを告げる。


「はぁ…、ダメと言ってもあなた達は聞かないでしょうしね。ですが神衣を纏えない以上、一撃が致命打になります。防御と回避中心、時間稼ぎを意識して立ち回ること! いいですね! 竜王達はここからかなり南下した場所にいます。私は先に向かって少しでも時間を稼ぎます。あなた達は後から追いついて下さい。ジャンヌ、ヨルム、行きますよ!」


「ふええ…、怖いですぅ……」


「ゆくぞ! 勇者よ、しっかりせよ!」


ギュアアッ!!!


アリアとジャンヌを頭に乗せたヨルムが高速で飛翔し、ダカルー達の下へ向かう。魔王領最北端から中央部へ、約数十㎞の距離を全速力で飛ばした。







ドゴォッ! バキィ! ドガガッ!!


「ハァ、ハァ……、ハハハッ、やるようになったのう。魔王の力を植え付けられたとは言え、よもやこれほどまで力が増すとはのう……」


単独で時間を稼いでいたが、能力が上昇した二人を相手にダカルーはさすがに息が乱れて来ていた。


「グ、ガ…、先、代…、サマ…」


「ウ…、グ、申シ、訳、ア、リマ、セ、ン…」


血の涙を流しながら、制御の効かない肉体に必死で抵抗しようとする二人。


「まだお主達は抗っておるのだの…。だが…、それもいつまで保てるのやもわからぬ……。カーズも間に合うかどうかも定かではない……。ならば…、儂の手で直々に引導を渡すべきであろうな。赦せ…、儂もすぐに後を追う…。ゆくぞ、|暴風龍壁《ぼうふうりゅうへき》!!!」


ゴオオオオオオオッ!!!


|龍闘衣《ドラゴローブ》の上から更に嵐の様な防御壁を纏い、上にかざした右掌に凄まじい力が集中していく。


「さらばだ、我が子孫達よ……。ダハーカ・ブレス!!!」


「待ちなさい! ダカルハ!!!」


竜王の奥義が放たれる瞬間、アリアの声が脳裏に響いた。咄嗟に発動を止めたダカルーの奥義はその勢いを失い、無散した。


「アリア様…。カーズは一緒ではないのですか?!」


「ええ、恐らくバアルゼビュートと単独で闘っています。しかし、あの子は必ずここに来ます。それまで互いの命を捨てる様なマネをしてはなりません!!!」


アリアの言葉に、ふっと落ち着きを取り戻すダカルー。


「フフッ、そうであった。あやつがそんな結末を許す訳がなかろうにの……」


「その通りです。それに援軍も来ていますよ」


アリアの後ろにはジャンヌを乗せたヨルムに、その更に後方にはエリックにユズリハ、イヴァリースにバサトが全力で追って来ている。


「さあ、最終決戦といきましょう。私はカーズの記憶から目にした |ファンタズム・エクスプロージョン《幻影よ灰燼と化せ》を撃つための準備をします。その間、みんなで時間を稼いで下さい!」


ダカルーを追って地上に降りた魔王二人に、到着した全員が回避・防御中心で立ち回る。レベル的にはこの場にいる味方の方が平均的には高い。だが相手は神力の鎧を纏っている。被弾した一撃が|陽子《ようし》を破壊する致命打になりかねない。魔王二人のスタミナを切らせることが重要、神衣、|龍闘衣《ドラゴローブ》の前では生半可な攻撃は無意味。だが肉体に傷は付けず、敢えて衣に攻撃を撃ち込む。


「アリア様、まだか?! こちらもそう長くは持たぬぞ!」


ダカルーの声が響く。


「くっ……、脳の記憶領域や心の深部まで負の感情が入り込んでいる……。しかし出力を上げ過ぎては彼らの脳や肉体までも破壊してしまう…。カーズ…、あなたはなんというとんでもない魔法を創造したのですか……。しかもあの高速で動く二人に対象を絞ってコントロールするなど……!」


最早猶予もない、アリアは一か八かでターゲットにカーズの創造魔法を撃ち込む覚悟を決めざるを得なかった。








ヴンッ!!!


「よし、間に合ったぞ!!!」


俺達四人がアリアのすぐ側に転移したとき、明らかにターゲットの相手に集中できていないアリアが目に映った。鑑定しても、やはり上手く狙いを定められていない。


「待て、アリア!」


ガッ! かざしているアリアの右手を掴む!


「カーズ?! それに三人共無事だったのですね!」


俺と一緒に現れたアヤ達三人にも声を掛けるアリアと、それに頷く三人。


「ああ、あの蠅野郎はキッチリ消滅させたぞ。俺が魔王化の呪縛を解く! アリア、お前は勇者、ジャンヌの力を覚醒させてくれ。そして三人は神衣を纏える。神衣がないエリック達と交代して時間を稼いでくれ!」


「わかりました。ジャンヌを覚醒させて連れて来ます!」


「ええ、任せて!」


アヤ、アガシャにディードが神衣を纏い、エリック達とスイッチする。さすが神衣を纏っているだけあって先程よりは多少安心して任せておける。


さあ、集中しろ! 脳と心、要は深層心理の奥まで浸透した魔王の意思とも言える、負の感情へと|標的化《ターゲッティング》する。思ったよりも深い、炎の魔力を練ると、脳を破壊してしまいかねない。ならば神気と聖属性を融合させて解呪と呪縛からの解放を同時に行う。後はジャンヌの勇者としての力に賭けるしかない!

神気をコントロールして内部の組織をガードし、負の感情をそこから切り離す。繊細なコントロールを必要とされるが…、やるしかない! そして切り離した負の感情に、聖属性で消え去るだけの魔力量と、ガードした部分の神気より弱めた神気を送り、重要部分を傷つけないようにするだけだ。集中しろ…、必ずこの二人を救ってみせる! かざした左手に力を収束させて解き放つ!


「いくぞ! 心に巣食った負の幻影よ、消え失せろ! 創造魔法・|アブソリュート・リリースド・カース《絶対なる呪縛からの解放》!!!」


カァアアアア!!! パキィイイイイイン!!!


「うぐっ!?」


「うあああっ?!」


竜王兄妹二人の動きが止まった。だが負の感情はしぶとく二人の心に搦み付こうとする。


「くっ…、今だ! アリアー!!!」


ジャンヌと共に俺の側に降りて来たアリア。覚醒に成功したのか、ジャンヌからは清らかな澄んだ神気が止めどなく溢れている。


「顕現せよ! この世界に混沌を|齎《もたら》す魔を祓う、勇気と聖なる力よ!」


ゴオオオオオオオッ!!!


ジャンヌとサポートしているアリアから荘厳な聖なる神気が放たれる!


「我が名はジャンヌ。この世界の勇者として悪を絶つ者! 出でよ! 聖剣|ブライト・オブリージュ《闇を照らす高潔なる勇気》!!!」


画像 勇者の意思に一時的とは言え、目覚めたジャンヌが力強く凛とした声で叫ぶ。眼前に具現化した黄金の美しく輝く聖剣をアリアと共に握り、二人で頭上高く掲げる! アリアはサポートしているということか。


「いきますよ! ジャンヌ!」


「はい! アリア様!」


「「天よ刮目せよ! |シャイニング・ホーリー・ブレイヴ《輝ける神聖なる勇気》!!!」」


ガカッ!!! カアアアアアアアアアッ!!!


二人が振り下ろした聖剣から、目も眩むほどの眩い輝きが迸り、昏い魔王領の一帯を激しく照らす!!!


「グアアアアアアアアアアアッ!!!」


「ギアアアアアアアアアアアッ!!!」


輝く光の一撃が、魔王となった二人の竜王を包み込む! その体から黒い呪いの様な魂、俺が切り離した負の感情の塊が天高く昇って行きながら消滅していった。

二人を鑑定しても、もう負の感情は完全に消え去って欠片も見えない。一時的な能力解放、しかも且つてない二人の魔王ということでアリアが足りない分の力を補ったのだろう。静かにその場に崩れ落ちた二人を、ダカルーが抱き起こす。


「う……、初代、様…?」


「私達、は……、一体……?」


アジーンとチェトレの二人がゆっくりと目を開けた。だがまだ状況が飲み込めていないようだな。


「よい、全て終わったのじゃ…。今は眠るがいい……」


「「は……い…」」


強力過ぎる力を使い過ぎたのだろう。二人共気を失う様に眠りに落ちた。


「よっしゃー! やったぜ!!!」


エリックが口火を切ると、全員が歓声を上げるも、疲労でその場にヘナヘナと座り込んだ。もう空が白み始めている。一晩中、徹夜で何とかミッション・コンプリートだな。俺もまた蠅にやられた背中が痛み始めた。その場にごろりと俯せに倒れ込む。


「アリアー、背中の治療してくれー」


「ええ…、何ですかこの黒い火傷は?!」


「蠅野郎の黒炎のブレスを、アヤ達三人を庇ってモロに喰らった。緊張が解けてまた痛み始めたんだよ…。はぁーーー、マジでキッツい一日だったなあー……」


「バルゼを単独で撃破するとは…。あなたの成長速度は凄まじいですね……。神気で受けた傷は神気を籠めた回復魔法でなければ効果がありません。よく覚えていて下さいねー」


アヤ達が「なるほど」と頷いているが、大きな山場を越えたことで気が緩んだのか、俺はそのまま回復を受けながら目を閉じて眠ってしまったのだった。




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