ご都合ほあたによって幼児化した菊の話
この話だけ国名注意(次からはちゃんと人名です)
セカキクのはずなのになんだか裏枢軸寄りになってしまった……
今日も今日とて会議は踊る。
これはいつものことだ。ホスト国であるドイツは、踊りに踊っている会議に堪忍袋の緒が切れたのだろう。
とても怒っていた。
イタリアはシエスタ、ロシアとアメリカはバチバチだ。
他の他国達も慣れているのであろう。みんな無視をしていた。
いつものようにフランスとイギリスも喧嘩をしている。日本は事前に配られていた資料に目を通していた。
そんな騒がしい会議もいつものことなので、日本は無視を決め込んでいたのだ。
「こんっの、髭野郎が!」
「それしかレパートリーないんですかぁ〜腐れ坊ちゃん?」
「テメェもだろ!っんの…ほあたっ!」
「お兄さんにそんなもん効きませ〜ん!」
さらりと慣れたようにかわす。ここまでの下りは何回見たのだろう、毎回同じような会話しかしていないのだ。
けれども今日は運が悪かった。ちょうどかわした直線上に、そう、日本がいたのだ。
それを見たイギリスはフランスと喧嘩していたのも忘れ、日本にこう言った。
「に、日本!よけろ!」
「えっ」
そんなことを突然言われても避けようがないだろう、日本はそのまま喰らってしまった。
ぼふっと煙が舞い上がり、日本の姿を隠してしまう。周りにいたものたちは喧嘩をやめ、その煙の舞い上がった方を見た。
シエスタをしていたイタリアもいつのまにか起きていて、煙に隠れた日本の姿におろおろとしている。
「ヴェ、ヴェ〜!日本〜!」
「日本!大丈夫か!?」
ドイツとイタリアが日本へと駆け寄る。
「ん、ぅ……」
ぴたり、と2人の動きが止まった。
さっきよりも少なくなった煙の中から聞こえるはずのない、幼子の声が聞こえたからだろう。
困惑が止まらないイタリアが思わず声をかける。
「…えっと…日本?」
ぱちくりと大きな黒い目が瞬きをする。
日本はもともと少し大きな目をしているが、そのときよりも大きくまぁるい目だ。
目だけではない、身長だって小さい方だがここまでは小さくなかった。
その情報でわかるだろう……日本は、幼児化してしまったことが。
「に、日本がちっちゃくなっちゃったよ〜!」
「あいやぁ〜かわいいある!」
「明らかに眉毛のせいだよね」
「うふふ、ちっちゃい頃の日本くんかわいいなぁ」
「彼、この頃はいったい何歳なんだい?」
「まったく…このお馬鹿さん達が!」
「日本かわええなぁ〜!」
多種多様な反応が日本を襲う。どこかもわからない場所で、大人に一気に言葉をかけられたらどうなるだろう。
答えは簡単。怯える、だ。
そんな日本はたくさんの人に囲まれ、大きくてまぁるい目から、大粒の涙が溢れでてきてしまった。
大声の鳴き声が会議室に響く。
すると、かちゃりと扉が開く音がした。
「あ?誰か子供が迷い込んだ……か、?」
「…って日本じゃねぇか、こいつ」
入って来たのはロマーノとプロイセンだった。まだ来たばっかの2人は状況が掴めないが、明らか子供の扱いに長けているロマーノが日本を抱き上げ落ち着かせている。
その途中に、プロイセンは状況を把握するために問い掛けた。
「イタリアちゃん、これどうなってんだ?」
「イギリスの魔法に偶然日本があたっちゃって…」
「なるほどな」
Danke!と言葉を続けた。
「にしてもだが、これはいつまでなのだ」
ふと思いついた疑問をドイツがぽつりとこぼした。
その疑問に答えるようにイギリスが言う。
「少なくとも1日以上だな。……まぁ、二日三日すりゃなおる」
「ちぎ、こいつ寝たぞ」
日本を落ち着かせていたロマーノがそう言葉をこぼし、重いのだろう、顔を少し歪めていた。
「お兄様、俺変わるぜ」
「Grazie」
さっと起こさないようにプロイセンの腕へと渡す。やはり兄だからなのだろうか、異様に扱いに長けている。
「んーでも、どうするの?」
「ああ…なおるまで誰かが日本の世話をしないといけないな。」
「それなら、師匠のところがいいと思うんだぞ!」
「あ?俺様か?」
「だって会議は明日で終わりでホスト国はドイツだろう?師匠なら扱いも慣れてるしね!」
「アメリカお前……大人になったな…!」
なぜか感動してるイギリスをうざったそうにしながらプロイセンの方へとむく。
アメリカにそう言われてしまっては納得以外の反応ができない。
まぁこの爺1人くらいどうってことないから別にいいんだけどな、と思いながら。
「でも、流石に明日の会議にはいたほうがいいんじゃない?」
「だって、いくらちっちゃくなっててもいなかったら怒られるのは日本くんだよ?」
その言葉に納得してしまうのも確かだ。
悩んでいたプロイセンの横に立っていたロマーノは、こう言った。
「別に明日ぐらい良いだろ。そんな大事な会議してねーんだし」
「あ、お兄様それ言っちゃう?」
未だどうしようか悩んでいる我が弟にプロイセンは問い掛ける。
「どうだヴェスト、明日日本も連れてって良いよな?」
「あ、ああ。かまわない」
「じゃ、今日の会議はもう終わりにするんだぞ!」
「もしかしてお前、ただ単に会議早く終わらせたかっただけじゃねぇか?」
図星をつかれたアメリカは、その自分の肩をびくりとゆらし、目線を右上へと移動させる。
「そっ、そんなこと〜…無いんだぞ!」
「お前は嘘が下手ねアメリカ」
またもやガヤガヤと騒ぎ出す会議室、ロマーノはふとプロイセンの腕の中にいる日本へと目線を向けた。
いつのまにか起きていた日本と目線が合う。
「?だれ、ですか?」
ロマーノの視線に気づいた日本は、 小さな口を開き、こて、と頭を傾げた。
それを見たロマーノはあまりの可愛さに心臓に大ダメージを負ったが、なんとか持ち堪えて自分の名を名乗る。
「ロ、ロマー……いや、ロヴィーノだ」
「ろ、ゔぃーのくん」
舌ったらずな声でロヴィーノのことを呼ぶ。
「……可愛すぎるぞこのやろー」
「同感だ。てことでヴェスト、俺たちもう行ってるな」
「ああ。気をつけてくれよ」
「ja!」
大きく返事をしたあと、プロイセンは扉の先へと消えた。