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閉じ込めてしまいたい」
その低く掠れた声が、結城の耳を熱く打つ。
一ノ瀬の指先が、結城の唇を震えながらなぞり、そのまま顎を強くクイと持ち上げた。
「あ……せん、ぱ……っ」
結城が何かを言いかけるより早く、一ノ瀬の顔が影となって迫った。
触れるだけの優しさなんて、今の彼には残っていない。
重なったのは、強引で、どこか悲痛なほどに激しい熱だった。
「ん……っ!?……ふ、ぅ」
突然奪われた呼吸に、結城の頭の中が真っ白になる。
鼻先をくすぐる一ノ瀬の清潔な石鹸の香りと、それとは相反する荒々しい鼓動の音が、結城の全身に伝わってきた。
驚きで固まっていた結城の体から、徐々に力が抜けていく。
あんなに拒絶されたと思っていたのに、今、自分を抱きしめる一ノ瀬の腕は、
骨が軋むほどに強くて――それが何よりも雄弁に、彼の「本音」を物語っていた。
「……っは、あ……」
ようやく唇が離れたとき、結城は膝から崩れ落ちそうになり、一ノ瀬のコートの胸元を必死に掴んだ。
見上げた一ノ瀬の瞳は、微かに潤み、ひどく熱に浮かされている。
「……逃げるなら、今だ、結城」
一ノ瀬は掠れた声で、警告するように告げた。
その指先が、結城の赤く腫れた唇を愛おしそうに、けれど今すぐにも壊してしまいそうな危うさで再びなぞる。
「一度捕まえたら、俺はもう二度と、お前を自由にしてやれない」
それは告白というよりも、呪いのような誓いだった。
けれど、結城の瞳にはもう、恐怖の色はなかった。潤んだ瞳で一ノ瀬をじっと見つめ返し、震える手でその背中に腕を回す。
「……逃げません。俺……先輩のこと、嫌われてると思ってたから、今……すごく、嬉しいです」
結城の無邪気で真っ直ぐな言葉が、一ノ瀬の最後の守りを粉々に砕いた。
一ノ瀬は喉の奥で小さく呻くと、今度はより深く、甘く、逃げ場を塞ぐようにして結城の唇を再び塞いだ。
冬の校舎裏。冷たい風のなかで、二人だけの世界が熱く、深く、溶け合っていった。