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いや、急に寒くなるじゃん。
ワイ末端冷え性なんよ、今手と足感覚ない…。 足の指が紫にならないことを願う😭
それでは、いってらっしゃ~い(^_^)/
ーーーーー
蘇枋がオレの横に来て、じっと本を見つめる。何も発する様子はなく、ただ、オレの決断を待っているようだった。
オレは覚悟を決め、厚い表紙を開いた。
日付は、オレの記録開始日よりも遥かに前の日付から始まっていた。
そこから、オレが知る前の、『院長の日記』としか思えない、個人的な記述が続いていた。
_年 _月 _日
酷い嵐の夜、研究所の裏手でフードを深く被った子供を拾った。痩せこけている。
こんなツートンカラーの髪とオッドアイ(琥珀色と藍墨茶)の子供は見たことがない。
外見から察するに、酷い虐待を受けていたのだろう。話しかけても怯えるばかりで、ほとんど声も出さない。
とりあえず、彼を「桜遥」と名付けた。
遠い場所へ、自由に生きてほしいという願いを込めて。
私の専門は動物の系統発生学。人間は対象外だが、彼の警戒心は野生のネコのようだ。放っておけない。
_年 _月 _日
遥が初めて、ほんの少し警戒を解いた。
私が研究で夜遅くまで起きていると、そっと隣に来て、毛布にくるまって座っていた。
言葉は交わさないが、確かな信頼を感じる。このまま、平穏な人間として育てるべきだ。
[緊急記録] _年 _月 _日
事故が起こった。
遥が、私の研究途中の『動物性統合因子』の薬液を、ジュースだと間違えて飲んでしまった。気づいた時には既に遅い。
彼は激しく痙攣して倒れ、私は慌てて彼をベッドへ運び込んだ。
少し経つと、彼の身体にネコ科の特徴である耳と尻尾が形成された。
小さな子供を傷つけ、その運命をねじ曲げてしまったこの悲劇は、完全に私の責任だ。
私は自責の念に打ちひしがれていると、激痛に耐えながら、遥がゆっくりと目を覚ました。
そして、私を見て、一言。
「…お前、誰だよ!」
薬液は、身体を変化させただけでなく、彼の記憶を根こそぎ奪い去っていた。
記憶を失ったオレを、院長はそれでもこっそりと研究所内で育て続けた。
だが、日記は緊迫した調子に変わっていく。
[記憶初期化後]_年 _月 _日
遥の存在がもし外部にバレたら、彼は生きた実験台として捉えられるか、兵器として利用されるかの二択だ。
私は決意した。彼の命綱となる「強さ」を与える。
そして武術を教え始めた。彼の俊敏性を最大限に活かすため、武器として一本の日本刀を与えた。彼は驚くほど素早く、強い。
だが、もし遥より強い人間が現れたら?その恐怖が私を支配する。
私は厳しく指導するしかなかった。
さらに、毒物を投与して免疫をつけさせ、最高の戦闘能力を維持するため、栄養剤だけを食べさせた。愛情は、もはや「生存」という名の鎖になってしまった。
_年 _月 _日
ついに、他の研究所に遥の存在がバレた。もう時間がない。
私は、彼を逃がすために闇オークションに出すことにした。
そこなら、情報が漏れる心配はない。
彼は檻に入れられるとは思うが、殺されはしないはずだ。
これ以外、遥が生きられる道はない。
そして日付は、昨日となった。
_年 _月 _日
運が良かった。どうやら遥はあの最強のマフィア紫霧閣(しむうかく)に買われたようだ。
着ている高そうな服から察するに、大切にされているようだ。
だが、まだ分からない。ちゃんとこの目で遥が大切にされているか、幸せか確かめたい。
ゆえに、自身の命をかけて、最後の実験をしようと思う。
そして、最後のページ。院長の日付のない、遺言のような文が綴られていた。
遥へ
この本を読んでいる、ということは、私はきっと君と話す時間が残っていなかったのだろう。私を憎んでくれて構わない。いや、憎むべきだ。
守れなくてすまない。苦しめてすまない。
本物の父親でなくて、すまない。
だが、最期に一つだけわがままを言わせてくれ。
残りの人生を「自由」に生きろ。
院長より
オレはノートを閉じた。全身の血の気が引いていくのが分かった。
桜:(アイツは…オレが憎むことを、望んだ…?)
院長が最後に言った「卒院、おめでとう」という言葉。
それは、オレを憎ませてでも守り通し、研究所という檻から完全に卒業できたことへの、歪んだ、だが本気の祝福だった。
桜:…蘇枋、お前知ってたのかよ?
オレは怒りとも悲しみともつかない感情で、横に立つ蘇枋を睨みつけた。
蘇:いや。
蘇枋は微かに眉をひそめた。
蘇:オレが知っていたのは、君のデータがこの研究所にあることだけ。君の過去の実験内容や、この資料室の存在、ましてやその本の中身なんて、オレは知らなかった。
桜:じゃあ…テメェがオレを買ったのも、ただの偶然だったのかよ…?
蘇枋は薄く笑った。
蘇:そうだね、けどオレは運命だと思ってる。桜君は、どう?
ーーーーー
今回はここまで。
さて、桜君はどう返事をするのでしょうかねえ?
恐らくですが、あと2話で完結する予定です。
♡、フォロー、コメント待ってます(^^)