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穏やかな陽だまりのカフェ。
窓際の席で、すちとみことは向かい合って座っていた。
「ねぇ、すち……」
カップを両手で包みながら、みことがぽつりと切り出した。
「俺たち、友達に……付き合ってるって、言った方がいいのかな」
その言葉に、すちは一瞬だけ表情を曇らせる。でもすぐに、苦笑いを浮かべて答えた。
「言わなくちゃいけないってことはないよ。俺は……今のままでも、十分幸せだけど」
みことは少し困ったように笑い返した。
「俺も……同じ。でもね、最近ふと思うんだ。 みんなに隠してるのって、ちょっと寂しいなって。 一緒にいるのに、隠しごとしてるみたいで」
すちは黙ってみことの言葉を聞いていた。
その瞳はどこまでも真剣で、やさしかった。
「……俺も、そう思ってた」
みことが驚いたように目を丸くすると、すちは少し照れくさそうにうつむく。
「みこちゃんのこと、隠したくない。堂々と“俺の恋人”だって言いたい。 でも……みこちゃんが嫌なら無理にとは言わない。無理させるのは、一番したくないことだから」
その言葉に、みことの胸がじんわりと温かくなった。
すちの手に自分の手を重ねる。
「ありがとう。……すちがそう言ってくれて、うれしい」
ふたりの手のぬくもりが静かに重なる。
「じゃあ、少しずつでいいかな? まずは、信頼できる友達から……」
みことの言葉に、すちは深くうなずいた。
「そうだね。みこちゃんが安心できるように、俺が支えるからね」
みことは小さく笑って、頬を染めた。
「……頼りにしてる、からね。すちのこと、大好きだよ」
「……俺も。ずっと、隣にいさせてね」
午後の陽だまりが、二人の影をやさしく包んでいた。
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「……だから、俺たち、付き合ってるんだ」
みことの一言に、場の空気がふっと静まる。
すちも隣で静かにうなずいた。緊張を押し殺すように、ふたりの指が机の下でしっかりと絡み合っている。
目の前にいるのは、いつもの仲間たち。気心の知れた数人。
でも「その空気」が変わるかもしれないという不安は確かにあった。
一瞬の沈黙のあと――
「……え? マジで? っていうか、そっか……」
先に口を開いたのは、明るくお調子者な友人だった。
「なんか、うん。今思えばすっごい納得かも。距離感おかしかったしな、お前ら」
「バレバレだったわけじゃないけど、空気感はあったよな」
冷静な友人が笑って言うと、場がゆっくりとほぐれていく。
みことは、胸の奥がじわっと熱くなった。
「俺たちのこと、変に思わない?」
そう尋ねるみことに、友人のひとりが眉を下げながら笑った。
「誰が誰を好きになったって、いいじゃん。すちがみことを大事にしてるのも、逆も、見てたらわかるし」
「てか、むしろ爆発すんなよ。こっちはおこぼれの糖分で生きてるんだから」
「それな。次はデート報告よろしく。話のネタにするから」
冗談まじりの軽口に、みことは思わず吹き出した。
隣ですちも苦笑している。けど、その横顔はどこか誇らしげだった。
俺たちは見られていた。
でも、それは“否定”じゃなく、“理解”と“受容”だった。
すちが小声で耳元に囁く。
「言ってよかったね」
「……うん。みんなに言えて、よかった。俺たち、堂々とできるね」
その日、胸のつかえがひとつ、音もなくほどけていった。
そしてふたりは、これまで以上に自然に、隣に立つようになった。
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