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みんなと話しているうちに、ずいぶん打ち解けてきた。ただ一人、末澤誠也を除いて。
ソファに座ってぼんやりしていると、隣にふわっと誰かが腰を下ろした。
〈さっきから階段の方ばっか見てるなぁ。……誠也くんのこと、気になるん?〉
晶哉くんが、子犬みたいに首を傾げて覗き込んでくる。
「うん……。なんで末澤さんって、あんなに女嫌いなの?」
そこへ他のメンバーも集まってきて、自然と視線を交わし合った。
〔末澤の奴、ああ見えて身体弱いんや。〕
リチャードさんが静かに口を開く。
{体調悪い時にな……前に居った女の人の一人に、無理矢理迫られてさ。抵抗できへん状態やったんやって。}
大晴くんの声には、珍しく笑いがなかった。
胸の奥がぎゅっと痛む。
「……っ。」
《……それで、女嫌いになってしもうたわけ。》
小島くんが肩をすくめながら続ける。
あの冷たい眼差し。
あの刺すような拒絶。
全部、ただの“嫌い”じゃなくて、“恐怖”だったのかもしれない。
「私……ここに居て大丈夫なんかな……」
『大丈夫やで。』
正門くんが優しい声で言った。
『俺らは如月ちゃんにここいてほしいと思ってるし。誠也くんも、如月ちゃんがそんなことする人やないって分かってるはずや。ただ……心のどこかで、まだ不安が残ってるんやろな。』
その言葉が、まっすぐ心に落ちてくる。
「……ありがとう。私、末澤さんと仲良くなりたい。そして……ここに居たい!」
そう言うと、みんなが微笑んだ。
昼過ぎ。
他のメンバーは仕事や用事で出かけていき、家には私と末澤さんだけが残った。
私は、簡単な昼ごはんを作り、そっと彼の部屋まで運んだ。
ドアの前に立つと、胸が少し高鳴る。
「末澤さん……昼ごはん、できました。ここに置いておきますね。」
返事はない。
ゆっくり深呼吸をしてから、その場を離れた。
リビングで一人、湯気の立つスープを口に運びながら考える。
なんで、こんなにも末澤さんのことが気になるんだろう。
……ハッと気づいた。
“昔の自分に似てる”からなんだ。
誰にも弱さを見せられなくて、信じたいのに、人が怖くて……でも、本当は助けてほしくて。
「だから……見捨てられないんだね、私。」
小さく呟くと、胸の奥がじんわり温かくなる。
私はそっと拳を握り、心の中で決めた
絶対に、あの人と仲良くなる。