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気がかりな夢から目が覚めた。

悪夢だった、ような気がする。

周りを見渡したとき、部屋が散らかっているのが目について、なんだか嫌な気分になった。喉元まで押し寄せる息苦しさを覚えながら、ベットから起き上がった。自室だった。

いや、そう、当たり前なのよ。いくら私でも、他人の家で寝るなんてはしたないことしないわ。無意識でも、ちゃんと足は家に向かうもの。無意識だからこそと言うべきかもしれないけど。

無意識だから思考がないというのは、違うわ。呼吸も思考も、無意識のうちよ。

湿っけを含んだ部屋の空気は、もう慣れてしまって何も感じなかった。ただ不安なのは、この生ぬるい空気の中で、私一人だけ死人のように冷たいことだけ。

それに、嫌に静かだ。今の私の心は乾いているのよ、そのくらい分かってちょうだいな。

一つ、振り子時計の音が響いた。

一つ、私の呼吸音だけが響いた。

一つ、私の鼓動だけが聞こえた。

うん、今日も世界は静かだわ!これは喜ぶべきことね。人間の喋り声が聞こえないもの。口の中に収めた、喋り声。

私一人だけの独壇場よ、ここは!

サブタレイニアン・ローズ!まさに私ね。

ねぇ、あの日から世界は楽しくなったのよ。みんな楽しそうに笑っているし、みんな優しくしてくれるから。

閉じてよかったわ、さとりの瞳。

でもね。たまに、心にぽっかり穴が空いたような感覚になるの。まるで空元気みたいね。

心だけが、水に沈んでいるのよ。そうすれば泣いても気づかれないでしょう?雨と同じよ。

水にはね、安心感を覚えるわ。ぬるいとそれはもう本当にね。

でも溺れそうになるの。まるで底がないように思えちゃうのよ。怖いから、丸くなるの。丸くなって、重い瞼を閉じるの。

さながら胎児ね。

とにかく、虫けらになっていなくてよかった!あれみたいに拒絶されるのは嫌だわ。

でも、私は小石ね。故意に恋する小石。

道端に転がっているだけの、小石よ!蹴飛ばされれば視界外に転がって終わり。

でも私はいつまでも恋を求め続ける。それ以外の心の隙間を埋めるものが分からないの!

やっぱり目があった方がよかったの?みんなから忌み嫌われる、さとりの瞳。痛い思いをしてもう開かないように縫いつけた、あの瞳!!

そうすれば、恋というものが少しは分かるの?エゴを保てるの?

もう、駄目ね。あんな思いをするなんて死んでもごめんだわ。

ハッとして目の前をもう一度見つめる。またやっちゃったみたい。

乱雑に投げられた玩具や、変えの衣服。それにメリーさんごっこの包丁と受話器まで!

駄目よ、こんなに散らかしてたら危ないじゃない。お姉ちゃんが間違えて踏んだらどうしちゃうのよ。

枯れた薔薇、香霖堂で見つけた不良品、道端に落ちていた粗末な家具。新しいペット、グチャグチャになった赤い………?

ううん、駄目よ、いくらなんでも物理的な目と心臓が欲しいわけじゃない。

救急箱に入っていた包帯、埃を被った巻物、レプリカの髑髏らしきもの、カトラリー、裁縫箱。

これは、いらない。捨てましょう。

そもそも、なんで髑髏なんて持ってるのかしら。お燐に借りたの?嫌ね、怨霊が着いてきたらたまったもんじゃない。

巻物なんて、あったかしら。一回見て嫌になっちゃったから放置しているのね。

ガラクタの山、私のイドの証。

振り子時計が、静かに鳴る。いや、この中だと少しうるさい。そういえば何時なのか。

深夜だった。三時よ!

一体いくら眠っていたのか。いつ頃帰ってきたのか。何一つ思い出せやしないけど。適当にフラフラ歩いて、適当に時間を潰す。それが私のやり方じゃない。今更どうしたのか。

でも寝ないとね。今の私は活動する気力が湧かないもの。酷く体が重いから。

そう、悪夢だった。ずうっと終わらない悪夢。長い長い一日のこと。

私のエゴは、一生寝ていたい?イドばかり起きているわ。

そして、私は眠り姫になるの。眠りっていうのは、死と隣り合わせよ。死神が喉元に鎌をかけているぞっていう!

でもそれはいけないよ死神さん。御先祖様はずっと見ているからね。




「無意識とガラクタ」

画像


夢野久作 ドグラ・マグラ

https://www.aozora.gr.jp/cards/000096/files/2093_28841.html


フランツ・カフカ 変身

https://www.aozora.gr.jp/cards/001235/files/49866_41897.html



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