テラーノベル
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「おいおい……マジかよ。すげぇな……」
妹とtimelimit:10の戦闘が始まってから、まだ僅かな時間しか経過していないと言うのに。
サポーターの俺としても、圧倒されたと表現するしかなかった。
二人の戦闘は、基本的にこのガンサバイブオンライン“らしくない”。
誰もが銃をぶっ放し、その上で制限を掛けられている中。
この二人だけは、そんなモノ最初から無かったかのように。
それこそスタイリッシュアクションが可能な、ガチガチのVR補助機能が付いたゲームでもやってるんじゃないかって程だ。
しかしそれは賞金首のsevenの様な派手な動きじゃない。
SF装備とも言われそうな3daysや、octopus8の様なソレでもない。
どこまでも人類でも可能そうな動きの範囲で、それでも普通じゃ絶対真似が出来ない事をやってのけている。
俺達運営側としては、普段なら絶対見る事の出来ない“方向性の違う”戦闘。
銃のゲームだと言うのに、お互いに近接戦に持ち込み。
夢月は銃を使っているものの、これを遠距離武器として見ていない。
接敵する度に絡み合う様な戦闘が勃発し、それでも決めきれない。
きっかけさえあれば、一撃でも良いのが入ってしまえば一瞬で終わりそうな戦いなのに。
度々離れては追う、または両者が離れて仕切り直す。
こんな事を続けつつ、こっちから見てもどちらが勝つのか全く予想出来ない程の試合が続いていた。
しかも物凄く違和感があるのが……お互いに、視線を逸らさないのだ。
迫って来る攻撃など防ぐか逸らす事が大前提で、次の一手を読み合っているかの様に。
相手の視線から、次の情報を探ろうとしているかの様な、そこらのプレイヤーじゃ絶対見られない様な試合が繰り広げられている。
「夢月を天才だって表現してたけど……あっちは化け物だな」
瞬きすら惜しみながらジッとモニターを覗き込んでいれば、相手のサポーターから通話が飛んで来た。
おいコラ、戦闘中に相手のサポーターと連絡取るんじゃないよ。
流石にそれはルール違反だろうがい、とか言いたくなったが。
「はい、もしもし」
『お疲れ様です、白川さん。もしかしてそっちも……“お断り”されちゃいました?』
「……えぇ、まぁ。今は“二人だけ”で楽しみたいらしいんで」
『白川さんの妹さんも、結構武人肌って言うか。“そっち系”の人ですねぇ~あはは、テンが気に入る訳ですよ』
勘弁してくれよ、妹はそういうのじゃないと思ってるんだけど。
けど夢中になれば周りが見えなくなって、全力で意識を“のめり込ませてしまう”のは否定できない。
そして今回妹が“知りたい”と思った項目が、timelimit:10という存在だった訳だ。
向こうの動きから学習して、それに合わせて。
即興で自らを同じレベルまで引っ張り上げている。
つまり今この瞬間も学習し、即座に実行へ移している。
マジで天才、VRの世界だったらアイツの横に並べるのは……多分元からそういう領域に居る“達人”みたいな存在だと思う。
んでもって、今目の前にすげぇ良いお手本が居る訳だもんな。
4cardの時みたいに、夢中で相手に教えを乞うって行動に迷いが無い。
このスタイルを、相手にも相当気に入られた訳だ。
「かぁぁ……何かもう、嫉妬しちゃいますね。すげぇ懐いてくれてた妹が、急に他の人の所にばっか行くようになっちゃったこの感じ」
『お疲れ様です。大変ですね、“お兄さん”も。テンの方も妹さんに夢中になっちゃってるみたいで、賞金首になった目的すらすっぽかしてる状態ですよ』
「ちょっと待った、まさか歳の差あっても狙ってたりとか……」
『そういうのじゃないですよ。若い子に“教えたい病”のお爺ちゃんですから、そっちの意味です。どうせ一戦だけじゃ終わりませんし、帰りに軽く飲みに行きませんか? こちらもシックスの事をもう少し教えて欲しいですし』
「……そっちがどれくらいテンの事を教えてくれるかにも、よります」
『本人からは何でも教えて良いって許可貰ってますから、ホント何でも聞いて良いですよ? むしろ妹さんの“サブキャラ”を見てから、リアルでも修行をつけたいとか言い出してるくらいですから』
「はっはっは……ちょいと行きますか。そこんところ詳しく聞きたいです」
などと、サポーター同士話していると。
どうやら、決着がついたらしい。
え、今ので? みたいな、凄く急に。
相手のナイフが6keyの首元に突き刺さり、これをあえて押さえ付ける様にしながら敵の顎に銃口を突きつけ発砲。
結果、ドロー。
おいおいおい、マジかよ。
見た限り相手のナイフは最後の一本だったみたいだし。
夢月に関しては、50口径は抜かなかったが……9mmの方は最後の一発を使って残弾ゼロ。
お互いに最後の勝負に出て、勝ちでも負けでもない選択に持ち込んだって感じだな。
こっわ……天才同士の勝負は、マジで。
何が起こるかなんて分かったもんじゃないし、どこから計算して作戦を立てていたのかなんて俺等には全く想像も出来ない。
などと、男同士の会話を繰り広げていれば。
「聞こえたわよぉぉぉ……白川君~?」
「どわぁっ!?」
サポーター仕事部屋は、基本的に個室というか。
専用の器具なんかも大体揃っている様な場所で、戦闘中のサポートをしている訳だが。
何故か、急に後ろから早乙女さんが“生えて来た”。
いやうん、その表現しか出来ない感じで、にょきって。
「仕事中なんですから、何勝手に入って来てるんですか!?」
「堅苦しいわねぇ……思春期の男子中学生でもないのに。こっちは統括です~、10と6がどうなったか確認しに来ただけです~って、言おうとしてたんだけど。あらら~二人揃って、随分暇そうにしてるじゃない。ヘッドフォンからも、向こうの声が漏れてたわよー?」
彼女の言葉に、向こうのサポーターも「うぐっ!?」と苦い声を上げているが。
「け、決して……サボっていた訳では……」
「あっそ。それじゃその辺の報告を踏まえて、“色々と”聞かせてもらいましょうかねぇ? 居酒屋で」
「へ?」
よく分からない事を言いだした彼女は、フフンッと胸を張ってから。
「私も連れてけ。勤務中に飲みの約束しやがりまして~上に報告しちゃうぞー?」
「……だ、そうです。如何でしょうか」
『も、問題無しです……はい。なんかスミマセン』
という事で、今回の飲み&報告会の参加者は三名になるみたいだ。
早乙女さんに関しては、完全に飲みたいだけな気がしないでもないけど。
まぁ、ね。
賞金首の慰労会というか、謝恩会的なイベントの後。
そういった気を抜く席、全然用意してないですもんね。
「とはいえ定時はとっくに過ぎてるし、戦闘も終わったんでしょ? 賞金首のお二人は? どうする感じ?」
「あ~多分、このまま何度も戦闘を続けるんじゃないかと。この後、少し相談する席を設けますけど」
「んじゃソレが終わったら店選びしましょ、何が食べたいか考えておいてね~」
えらく上機嫌の彼女は、早速スマホで居酒屋を見繕いつつ、サポーター部屋を出て行ったけど。
自分だって勤務中に居酒屋ページ覗いてるじゃねぇかよぉ……と、思ったり。
良いんだけどさ、別に。
『相変わらず、好かれてますね。白川さん』
「はい? いやいや、早乙女さんは誰にでもあんな感じでしょ。ウチのチーム、基本的に仲良いし」
『そこは否定しませんけど。まぁ、良いです。とりあえず、一旦賞金首のお二人も含めて場を設けますよ。このまま放っておいたら、勝手に次の戦闘始めそうなんで』
この一言で、モニターに視線を戻してみれば。
戦闘が終わった二人が待機部屋に戻され、何やら興奮気味にお話している御様子。
6keyだから無表情ではあるんだけど、必死にtimelimit:10から何かを教わっているみたいだ。
何と言うか、本当に成長したなぁ……ウチの妹。
昔だったら、それこそビクビクしっぱなしの状況だったろうに。
今では、今日喋ったばかりの人に対して、あんなに夢中で会話しているんだから。
「夢中になることは良い事だぁ~ってね。とはいえ、兄離れしてるみたいでそこだけは寂しいもんだ……」
喜んでいいのか、ため息を零せば良いのか。
兄妹ってのは、やっぱりなかなか難しいものだねぇ。
コメント
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読み終えたわ!第136話、めっちゃ熱かった🔥 天才同士の戦いって、まさにああいう感じなんだなって思った。お互い視線外さず、最後の一手まで読み合ってる感じがゾクゾクした。あと、サポーター同士の会話とか、お兄ちゃんの「妹が離れてく寂しさ」みたいな心情にもグッときたわ。成長した妹を見て喜びつつも寂しそうなとこ、めっちゃ共感できる…。早乙女さんがにょきっと現れて飲み会に乱入するところ、ちょっと笑った。良い緩急だった!
柘榴とAI

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