テラーノベル
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「そーりゃ照、やっちゃったねぇ」
「はぁ…うまく言えなかった」
照と定例会になりつつあるラーメン。
進みが悪いなと思ったら、告るの失敗したらしい。照らしいっちゃらしいけど、こんな見た目で肝心な時乙女なんだから世話ない。
「で、どうしたいの?」
「翔太の気持ちをちゃんと知りたい」
「なんだ答え出てんじゃん」
「でも聞くの怖い」
「うわ出た」
ドン引きして見せると照はムッとした。
「そんなに怖いなら、もう聞かなきゃいいじゃん。もし振られて関係が気まずくなるとか、グループに迷惑かけるとか、そんな程度の想いなら蓋しとけよ」
「………」
俺を真っすぐ睨む照の顔には、そんな生半可な気持ちじゃないって書いてある。
「もー、怖い顔すんなって。照が本気なの、俺はちゃーんとわかってるよ」
そう伝えてからチャーシューを頬張って、流れるように照のも一枚くすねる。
「おい」
「うっまぁ」
分厚いチャーシューを堪能していたら照がふっと笑った。
「もう一枚あげる」
「まじで?」
「お前がわかってくれてるって思ったらやっぱり心強いよ。だからお礼」
ちょっと照れくさくて『やだぁ、好きにならないでよぉ?』と茶化してみたら『ならねぇよ』と即答された。
「俺、みんなに遠慮しすぎだって」
「それしょったが?はは、よくわかってんねぇ」
照から丼に入れられたチャーシューを遠慮なくいただいて、チャーハンも食べる。
「それ、もうアイツ照に来て欲しいって言ってるようなもんじゃん。聞いたら話してくれんじゃないの?しょったの気持ち」
もちろんお前もちゃんと伝えなきゃいけないけどね、と言うも、照は『そうだよな…』と言いつつどこかまだ悩ましい雰囲気を出していた。
そこでスマホがメッセージを報せて鳴る。照がその通知に目をやり、二度見したので送り主はすぐにわかった。
「なに、しょった?今見れば」
「うん…」
緊張した面持ちで画面を開き、しばらく凝視するとササッと返信をして俺の方を見る。
「翔太が、会ってちゃんと話そう、だから時間作れって」
「なんだそれ。向こうにお膳立てしてもらってんじゃん」
つくづくしょったの事になると受け身で乙女で困る。
「うまく話せるといいね、今のうちにちゃんと気持ち整理しときな」
「ふっか」
「んー?」
「悪いけど、もう一軒付き合って」
さっきまでのふにゃふにゃ乙女が、何かを決意した男の顔に変わっていた。
この、照が漢になる瞬間。長年一緒にいて何度か見てきたけど、いつも最高に格好良くてゾクゾクする。
俺も大事な決断をしてる…主に高い買い物だけど…時にはこんな顔してるといいなと思うくらい、この瞬間の照には憧れみたいなものを持っている。
「いいよ、絶対成功させようじゃん」
精一杯のキメ顔をしながら、俺は伝票を照の前に置いた。
コメント
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ここで💛💜なのさすがすぎるかっこいい✨✨
ひかるが男になる瞬間わかるー。かっこいい。基本ぶりっこなのに。