「どうして僕を助けるの?」
中学2年生の春。幼馴染に声をかけた。
「さぁ?なんでだろうね。」
無邪気な笑顔で僕の言葉を受け流した。こういうトコ、昔から変わらない彼。
夕日に照らされている彼の髪の毛は、生まれつき色素が薄い。瞳も微かに色素が薄くて綺麗なガラス玉のようだった。
そんな彼はいつも、死のうとする僕を助けてくれる。
両親もいなく、友人もいない僕にとってこの世界はどうでもいいもの。
親戚にも見捨てられ、たった一人の幼馴染だけが僕の元に残った。
彼はいつも僕を見下しているはずなのに。僕は彼に心を許してしまっている。
ある日の朝。教室の僕の机の上に、白い花が花瓶に生けられ飾られていた。
僕はそれを振り払った。ガシャッと大きな音をたてて割れた花瓶は、水と花と一緒に床に散らばっている。
クラスメイトはそんな僕を見て、怪訝な顔を浮かべた。
僕の机と割れた花瓶を見ていたら、急に気持ちが悪くなり保健室へと向かった。
廊下で彼とすれ違ったが、無視して保健室に駆け込んだ。
保健室では、テレビが点けっぱなしにされており、そこにはあるニュースが流れていた。
『〇〇中学校。1人の男子生徒を庇い、男子生徒の幼馴染死亡。』
大きな見出しと共に、死亡した男子生徒の顔が表示された。
僕だ。僕の顔だ。僕が死んでいるとは、どういうことだろうか。
僕は生きている。だって、ここにいるんだもの。このニュースはデマだ。
僕はピッとテレビを消して、教室へ戻ることにした。
ガラッとドアを開くと、生徒全員がこちらを振り返った。
彼以外は。
クラスメイトは、僕の方を見るなりコソコソと陰口を始めた。
僕は無視して、彼の隣の僕の席に座る。
その時もずっと生徒全員はこちらを見ていた。
「なんで僕、こんなに見られてるの?」
彼は答えないまま、ノートを書いていた。
放課後になるなり、僕はクラスメイト全員が帰るのを待った。
彼と話をしたい。
教室の中が空っぽになって、彼と2人きりになる。
「お前さ、もう学校来ない方がいいぜ。」
彼は僕の机を見つめながら呟く。そして一方的に言葉を綴り始めた。
「お前、クラスメイトによく思われてない。それに……。」
「お前は、もう死んでるんだから。」
は?どういうこと?
彼は何を言っているんだろうか。僕が死んでる?ふざけてる?
「お前、俺を庇って屋上から落ちたんだよ。」
その言葉は、嘘みたいに真っ直ぐ聞こえた。
そうか、僕、死んでたんだ。
「お前は死のうとしてたけどさ、それ以前に虐められてる俺を庇って亡くなるとか……。絶対、嫌だったろ。」
彼の瞳から、静かに涙が溢れた。
死にたい僕と、虐められてた君。
その関係は最悪で、僕は彼を死なせたくなかった。だから、彼を庇って死んだ。
それってWin-winじゃない?
彼には見えない僕は立ち上がって、黒板にチョークで文字を書いた。
僕は、あの日とは反対の問いかけをした。
彼はこの言葉の意味が分かったのか、ボロボロと泣き始めた。
「俺、お前を一生忘れないから!来世では、死のうとするなよ…?」
僕は清々しい気持ちで成仏することができた。
あの言葉の意味、それは
解ってくれて、ありがとう。
コメント
18件
これは納得するわ...なんていうか言葉の選択(?)とか書き方とかもう一瞬本当に小説家なんじゃないかって思っちゃいました...最優秀賞賞おめでとうございます!
参加ありがとうございます! …最優秀賞賞2つ作っちゃダメかな?w
やばい... 最優秀賞候補がっ...!ライバルがっ...!