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「私も、触ってくれるか?」
「うん……」と頷いて、彼の厚みのある胸筋に、おずおずと手で触れた。
「ん……くっ」
さっきのお返しにと、凸端を二本の指でこすり上げると、彼の口から艶めいた声がこぼれた。
「そんなことをしたら、眠れなくなるだろう、うん?」
子どもを咎めるような言い方をして、私をわざと睨むようにも見つめる彼に、
「初めに仕掛けたのは、貴仁さんの方だもの……」
唇を尖らせて、甘えたように反言すると、
「……意地っぱりな唇だな」
低く抑えたトーンで一言を呟くや、いつもは理性的な彼からは想像もつかない、喰らいつくようなキスが襲って、息が詰まりそうにも感じた。
深くなるキスに身を委ねながら──、
自分から告げた通りに、それ以上の行為に及ぶことはないとわかっていても、重なる肌が次第に熱を孕んでひりついていく。
「もっと、して……」
何をかは口には出さずに曖昧にぼかした心意を、彼は汲み取ったのかどうか、
唇から顎の先、喉元へと口づけをずらした後に、ふと顔を上げて私を見やると、
「この先に進めば、もう眠れなくなるが、どうしたい?」
気持ちを確かめるように、そう問いかけてきた。
やっぱり先へ行きたい想いはあったけれど、オーバーワークな彼の体に、あまり負担をかけたくもなかった。
「……。……あなたに抱いてほしかったけど、でも初めに言ったように、このまま寝ようかなって……」
口先でぽそぽそと呟くと、
「私の心配をしているのか?」
彼から額をコツンとぶつけられた。
「だって……今そうしたら、さっきのあなたのセリフじゃないけれど、きっと求めすぎてもしまうから……。そうしたら、本当に眠れなくなりそうだもの……」
顔を赤らめつつ、本心を告げると、
「君は、愛おしすぎるな……」
彼が、ふっと微笑んで一言を返して、
「では、これは次の約束の証に」
私の上胸に唇を付け、チュッと紅く痕を残した。
「……約束の証」
指先で、そっとキスマークをなぞり、再びのキスを交わす。
溢れる想いに、幾度となく口づける内、陶酔に落ちるようにいつしかまどろむと、
「おやすみ、彩花、幸せな夢を」
低く密やかな彼の声が耳をさらい、夢うつつにゆっくりと落ちていった……。