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矢太郎は難儀していた、どうやら地域の祭りの取材を担当することになったようだ。それなら何故難儀していたかと疑問だろう、そよが祭りに誘って予定の重複が発生した。これだけで内容が把握できてしまうはずだろう。そよに話すとクスッと微笑を浮かべこんな提案をした、祭りで恋仲になりたい女の子おすすめ行動特集!と言うターゲットを若年層の女子に絞って記事を作ると言う。祭りが終わりやはり、難儀していた。そよに言いくるめられ矢太郎は浴衣を着ることになった、荒い縦縞の青い浴衣に髪を少しまとめ、緑の髪紐で結い上げた。神社の鳥居の柱でそよを待つ、なにやら鳥居の向こう側が騒がしいと目を向けると朱色の尾鰭をそよがせた金魚が鳥居に吸い込まれる様に入って行った、そよを待ってるので追いかけることが出来ない。ちょうどそよが息を荒くして駆け寄ってきた、そよも夕方を来ていた。紺色に向日葵の花が描かれたハイカラな浴衣だった、そよが落ち着いたのを確認し金魚のことを話すとやはりそよも花が見えていたらしい。確認がてら鳥居をくぐる、人がこれでもかといる。屋台の呼び声、話し声、全ての声で矢太郎の声が描き消される。何度もそよとはぐれそうになった、やっとの思いでそよの手を握りそのまま神社の本殿に急いだ、もう花火が撃ち上がり大輪の花を咲かせている。二人は金魚のことなど頭から離れていた、思い出させるように朱色の金魚が通りすぎた。
はっとして追いかけた、せっかく結って来た髪もまばらにほどけ、下駄の鼻緒で足が擦りきれ血が滲んだ。
どうやら神社の祭事でつかわれる神具が紛失したらしい、しかし到着時には解決していた。どうやら保管場所の勘違いだったようだ、一安心といえばそうなのだがどこか府に落ちない。
その時二人は知らなかった、神社の倉に変死体が眠っていることを。