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こんにちわ〜
今回は晴明(はるあき)&晴明(せいめい)っていう感じで行くんですけど
文章中とかわかりにくいと思うので少し説明します。
晴明(はるあき)のセリフは「」これで
晴明(せいめい)のセリフは『』です
晴明って出てきた時に公←これがついてたらせいめいのことです
何もついてなかったらはるあきくんです
わかりにくくてごめんなさいッ!
第1話 目覚めない朝
朝だと思った。
けれど、ここには朝を告げる音がない。目覚ましも、車の走る音も、人の話し声もない。ただ、柔らかい光だけが、最初からずっとそこにある。
晴明は、ゆっくりと目を開けた。
畳の匂い。どこか懐かしい、古い家の空気。
障子越しの光は強すぎず、弱すぎず、時間という概念そのものを曖昧にする。
「……あ」
声を出してみる。
喉は痛くない。体も重くない。
それが当たり前のはずなのに、なぜか胸の奥に、説明できない違和感が残った。
『おはよう、晴明』
背後から、穏やかな声がする。
振り返る前から分かってしまう。
ここでは、いつだってこの声が最初にある。
「……ご先祖様」
白い狩衣を纏った男が、そこに立っていた。
僕のご先祖様だ。
伝説の陰陽師であり、晴明と同じ名を持つ、遠い過去の存在。
『今日の調子はどうだい?』
毎日、同じ質問。
体調。気分。眠れたかどうか。
それが“確認”なのか、“確かめ”なのか、晴明には分からない。
「……大丈夫です。今日も」
そう答えると、晴明公は安心したように微笑んだ。
『それはよかった。無理をする必要はないよ』
その言葉に、胸が少しだけ締めつけられる。
無理をしなくていい。頑張らなくていい。苦しまなくていい。
ここでは、それが当然のこととして与えられる。
――でも。
「ご先祖様」
呼び止めると、晴明公はすぐに視線を向けた。
『どうしたんだい?』
責める気配はない。
ただ、話を聞く準備が整っている目。
「……ここって、本当に現実なんでしょうか」
一瞬だけ、空気が止まったような気がした。
けれど、晴明公の表情は変わらない。
『どうして、そう思った?』
「だって……」
言葉を探す。
痛みがない。疲れない。失敗がない。
眠れば必ず、同じ場所で目を覚ます。
「……楽すぎて。怖いんです」
正直な気持ちだった。
晴明公は、少しだけ目を細める。
『楽なのは、悪いことかい?』
「……分かりません。でも……」
晴明は、袖をぎゅっと握りしめた。
「こんなの、間違ってる気がして……」
自分でも、何が間違っているのかは言えない。
ただここにいるほど、自分が“薄くなっていく”感覚だけがあった。
晴明公は静かに歩み寄り、晴明の前に屈む。
『晴明、どうしてそんなこと言うんだい?』
声は優しい。
否定もしない。叱りもしない。
ただ、理由を問いかけるだけ。
『君は苦しんでいない。独りでもない。
それで、何がいけないんだ』
「でも……僕は……」
その先が、続かない。
“外”という言葉が、喉の奥で引っかかる。
思い出そうとすると、頭の奥が鈍く痛んだ。
『考えなくていい』
晴明公の手が、そっと晴明の頭に触れる。
『君は、ここにいればいい。
僕が、ずっと見ている』
その瞬間、不安がゆっくりと溶けていく。
疑問も、恐怖も、霧の向こうへ押し流される。
「……はい」
そう答えてしまった自分に、晴明は気づかないふりをした。
障子の外には、相変わらず時間の止まった光。
朝でも、昼でも、夜でもない世界。
晴明はまだ知らない。
この“目覚めない朝”が、すでに守りという名の檻であることを。
そして晴明公が――
その檻を、決して壊すつもりがないことを。
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タイトルが既に最高✨ 晴明君が起きたけど淡い光だけが見えるだけ…そして後ろに現れる晴明公! 晴明君が疑問に思って言葉にしたのに晴明公によって消された…続き楽しみにしてます!