「勇斗って好きな人とかいたりしないの?」
突然、仁人から聞かれた質問にびっくりする。
「はぁ?え?なに言い出してんの?」
「いやさ、俺さ、恋愛とかし始める中学3年、15歳くらいにはもうこの業界にいたわけじゃん。んで、別に学生時代友達作りに励んだわけでもないし、そもそも、青春とか恋愛とか無縁の世界で生きてきてさ」
知ってるわ。ずっと一緒に活動してきたんだから。
「ラジオとかで若い子のそういう話聞いて勝手に青春取り戻してんだけどさ」
「仁人ってまじおじさんだよな」
「おじさんって言うなや。でも、結構おじさんだよ俺ら。んで、そういえば勇斗からそういう話聞いたことなかったなと思ってさ。どうなん?」
「……どうなんって…」
こいつわかって聞いてきてんのか?
「仁人くん、あのね、俺も、M!LKってグループに所属しててね、仁人くんと一緒で恋愛には無縁かな?」
「なんもわかってない子供に話すみたいな話し方すんなや」
あほみたいな質問を仁人がしてきたくせになんで俺が怒られんだよ。
「過去、過去になんかいいなーって人いなかったの?って話」
「過去…ね」
「共演女優さんとかさ、佐野くんドラマとかいっぱい出てるんだからちょっとくらいあったでしょ」
ねぇよ。仕事仲間であってそれ以上でもそれ以下でも。
「…一人だけ、いたかも」
「まぁじ!えっ!がてぃ?」
「あ、がてぃやめて」
小鳥みたいな口で上目づかいしてくんのもやめろ。
「誰?俺知ってる?いや!名前は言わなくていいや!え、ちょ、どんなとこが良かったん?!」
捲くし立てるように矢継ぎ早に楽しそうに聞いてくる仁人にイラっとする。
「歌うまい、しゃべりもうまい、ダンスもうまい」
「え?女優さんじゃない感じ?!」
「しっかりしてて、気前がいい。普段は感情出さないのにここぞってタイミングでさらけ出してくるのがずるいなってなった」
「え、めっちゃ無視するじゃん」
「しゃべりがうまいって言ったけど、ずっとうまかったわけじゃなくて昔はトーク中でも合いの手みたいなことしか発言してなかったけど今は主になってトーク回してるし、ラジオもさせてもらえるようになってて、でも、それに胡坐かいてるわけじゃなくて常に挑戦と反省を繰り返してるところ……が、いいなって…」
思ってる。ずっと思ってる。
「へー!って思ってたんだ!ベタ惚れだったんじゃん!勇斗にもあったんねーそんな時が」
今もだわ。
「もしかしてさ、勇斗にとってそれってさ、初恋だった感じ?」
「…かもな」
初恋……
「えー!なんかいいねぇ~」
「仁人はなかったわけ?初恋」
「いやさ、それがさ、まじでないのよ。これっぽっちも」
「つまんな」
「そー!それ、ハコちゃん。あ、レコメンの作家さんハコちゃんって言うんだけど、ハコちゃんにも同じこと言われた。つまんないって!うるせぇ!俺の人生つまんなくてなにが悪い!!」
なんで仁人今日こんなテンション高いん?
「えー!太智とかにも聞いてみよ」
満面の笑みで「勇斗ありがとー」って言いながら立ち上がる仁人に「口外すんなよ」って軽口を言いながら背中を見送る。
「すごいよね。あそこまで言われて自分のことかなとか思わないんだもん」
「うぉっ!!!」
真後ろから柔太朗に話しかけられて椅子から転げ落ちそうなぐらいビビった。
「おまっ!いつから聞いてたんだよ!」
「最初からいたよ。吉田さんが来る前から」
気づいてなかった…
「気づいてなかったでしょ。二人の世界だったもん、完全に。でも、あういう話するときは気を付けなよ」
「…はい」
確かに、柔太朗の言うとおりだわ。
一応、俺らはファンに、み!るきーずに夢を見せるアイドルなんだから。
だから、わかってる。
俺の『初恋は実らない』
コメント
3件
うわ、悲しすぎる、 けど無邪気な仁人くんがあまりにも可愛すぎる、
はぁ~😖いつも、仁人くんは肝心な時に鈍感になるんだろ、 普段はあざとい全開なのに、 うーん🤔これも新手のあざといなのか 本当に最近の佐野さんの行動を見てると珍しく素直に仁人くん愛が溢れてるんだけど、 仁人くん気づいて💓💛