テラーノベル
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3話
夕陽がゆっくりと洋館の屋根の向こうに沈んでいく。
空は茜色から紫へと変わり、薄く雲が流れていた。
館内には、一日中の練習で疲れ切ったメンバーたちの息遣いが静かに響く。
じゃぱぱは自分の部屋で、ベッドに深く腰をかけた。
腕を伸ばして背伸びをすると、筋肉がピリピリと痛みを感じる。
身体のあちこちがまだ練習の疲労を訴えていた。
けれど、その疲れよりも心が満たされていることに気づく。
「阿部くんの教え方……優しくてわかりやすくて」
じゃぱぱは小さな声でつぶやきながら、隣の部屋から聞こえるのあの寝息に耳を傾ける。
柔らかく、安心できるその音に、自然と顔がほころんだ。
窓の外には、夜空が広がり、星が一つ、また一つと輝き始めている。
じゃぱぱはゆっくりとベッドに横たわると、目を閉じた。
その心には、まだ言葉にできないけれど、確かな感情が芽生えていた。
その頃、のあも自分の部屋で眠りにつこうとしていた。
今日の一日を思い返しながら、彼の優しい表情を思い浮かべる。
「大介くんって、いつも穏やかで、どこか包み込んでくれる感じがする」
身体の疲れが少しずつ和らぎ、安心感が胸の奥に広がっていく。
けれど、その安心感の隣に、甘くて切ない予感もひっそりと忍び込んでいた。
のあは静かに息を整え、明日もまた会えることを心の中で願った。
廊下を隔てた隣の部屋では、深澤辰哉がソファに座り込んでいた。
「今日の練習は、想像以上にハードだったな……」
隣にいるなおきりは、少し照れながら笑った。
「でも、深澤くんの動き、すごくかっこよかったよ」
深澤は少し顔を赤らめ、目をそらす。
「そんなことないよ、なおきりこそ、すごく頑張ってた」
ふたりの視線が交わり、ほんの少しだけ距離が縮まった瞬間だった。
リビングではゆあんくんが窓辺に座り、外の夜空をじっと見つめていた。
冷たい風が窓から入り込み、彼の髪をそっと揺らす。
「涼太くんのことを考えると、胸がざわざわして……」
声にならない思いを抱えながら、ゆあんくんは目を閉じた。
その瞬間、遠くから宮舘涼太の静かな足音が聞こえた。
涼太は気づかぬふりをして、そっと隣に腰を下ろした。
「遅くまで起きてるね」
ゆあんくんは驚いて振り向くが、その目に映った涼太の優しい表情に少しだけ心がほどけた。
「……うん、少しだけ」
ふたりの距離が自然と近づき、互いの息遣いが夜の静寂に溶けていく。
一方、リビングの隅ではラウールとどぬくが軽くストレッチをしていた。
「今日の練習、どうだった?」
「疲れたけど、充実してた」
「こうして話せる時間って、大切だよね」
ラウールが穏やかに微笑み、どぬくもそれに応えた。
「明日も一緒に頑張ろう」
ふたりの言葉は優しく、まるで約束のように響いた。
館内に静けさが戻り、夜が深まっていく。
けれど、メンバーたちの心の中は少しずつ動き出していた。
疲れた身体の奥に、いつの間にか芽生えた温かな感情が、これからの時間を彩る小さな火種となっていることに気づいている者はまだいなかった。
それぞれの胸の中で、かすかな恋の灯火が揺れ、静かに燃え始めていた。
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