やはり、昨日の勝者はバルドゥビーダさんだった。そう、俺には思えてきた。これが、虚無感の理由のようだ。本当に勝っていたならば、達成感に満たされているはずだ。
「やっぱり、これはいただけません」と俺は言った。
羽田さんが、卓が、弘子が、社員達が目を丸くしている。
一瞬にしてあたりが静まった。
「せっかく会長が言ってくださってるんだぞ」と卓が言う。
バルドゥビーダ氏は、その子犬のような透明な瞳で俺を真っ直ぐ見ている。
「俺には、俺のギターがありますから」と俺は言った。
バルドゥビーダさんは、小さくうなずいた。それから、音楽帝国一行はゲートへと向かった。
ここにいる皆が会長と呼ぶバルドゥビーダさんは、ゲートの前で最後に振り返ると、「君もいつか、俺の音楽政府に住むといい。それまでに、バツグンの住み心地にしてみせるよ」と言った。
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