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寿命㌫(主) 🔮🖤ᩚ
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ゆいぽん
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(……何を着ていけばいいんだろう)
畳の上に立ち尽くしたまま、柊吾は小さく頭を抱えた。
普段の外出といえば、近所のスーパーとドラッグストアを往復する程度。毛玉の浮いたスウェットか、洗いざらしで色褪せた無地のTシャツがあれば事足りていた。人目を避けるように生きてきた四年間、服を選ぶ高揚感などとっくにどこかへ置き忘れてしまったはずだった。
それなのに今、押し入れの奥から引っ張り出した数少ない私服を畳いっぱいに広げ、ああでもないこうでもないと身体に合わせている。
アイドルの頃は、プロのスタイリストの手で用意された華やかな衣装に袖を通すのが当たり前の日常だった。だが今、目の前にあるのは、量販店のワゴンや安売りラックに並ぶような、どこにでもあるシンプルなシャツやカットソーばかり。
(派手すぎても浮くし、かといってだらしなく見られたくはないし……)
黒のスキニーに合わせるトップスを何度も取り替える。黒無地のカットソーを当ててみれば「全身真っ黒で暗すぎる」と放り出し、少し柄の入ったボーダーを着てみれば「子どもっぽい気がする」と脱ぎ捨てる。
ただの外出、親切な隣人に付き合ってもらうだけ――そう何度も心の中で念仏のように繰り返す。それでも、鏡の前で白のオーバーサイズシャツを羽織り、清潔感のある襟元を整えている指先は、情けないほど微かに震えていた。
洗面台の前に立ち、くしゃくしゃになった前髪にブラシを通す。寝癖を水で濡らして直し、棚の奥に眠っていたワックスをほんの少しだけ指先に取り、毛先を軽く遊ばせてみた。
だがすぐに「張り切りすぎだろ」と恥ずかしくなり、結局は手ぐしでナチュラルに戻してしまう。誰かに会うための身支度――その行為がもたらす甘いざわめきと、浮足立つ自分への猛烈な羞恥心が、胸の内で激しくせめぎ合っていた。
何度も姿見の前で立ち止まり、ようやく全体の身なりが決まったのは、九時半を回った頃だった。
約束の十時まで、まだ三十分近くもある。
完全に手持ち無沙汰になった柊吾は、靴下を履いた足で狭い部屋の中を落ち着きなくうろうろと歩き回った。玄関の鍵は閉めたか、スマートフォンの充電は満タンか、財布にお金は入っているか、ハンカチはポケットに入れたか――普段なら気にも留めない些細な確認を何度も繰り返しては、柱時計の文字盤を見上げる。
カチ、コチ、と規則正しく刻まれる秒針の音が、静まり返った部屋にやけに大きく響く。
(……早く降りすぎても、待ってました感が出て恥ずかしいし)
壁一枚を隔てた隣室の気配に耳を澄ませてみるが、物音ひとつ聞こえてこない。黒瀬さんはもう準備を終えているのだろうか。それとも、すでに下に向かっているのだろうか。そんな想像が頭を埋め尽くし、九時五十分を過ぎたあたりで胸の鼓動は限界を迎えていた。もうこの静かな部屋の中にじっとしていられない。
柊吾は小さく深呼吸を落とし、小さなサコッシュを肩に掛けて意を決するように玄関のドアノブを回した。
外に出ると、夏のぬるい空気が頬を撫でる。
カン、カン、と鉄製の外階段をゆっくり一段ずつ、靴底の音を響かせながら降りていく。
踊り場を曲がり、ふと下へ視線を向けた瞬間――約束の十時を少し前にした階段の下、アパートの敷地脇に立つ瑞樹の姿が目に入った。
ネイビーのリネンシャツに黒のスラックスという、涼しげで飾らない装い。手元のスマートフォンからふっと顔を上げた瑞樹の、眼鏡の奥の切れ長な瞳が、階段を降りてくる柊吾の姿を静かに捉えた。
コメント
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かんなさん、第43話読みました〜!😭💕 柊吾の服選びに悩む姿、めっちゃ可愛くて胸キュンしました…!アイドル時代とは違う「普通の服」に戸惑いながらも、瑞樹さんにどう見られるかを気にしてる感じがもうエモすぎる🏻 特に「張り切りすぎだろ」って自分でツッコむところ、わかるよその気持ち〜!そして階段下で待ってる瑞樹さんの姿…眼鏡の奥の切れ長な瞳で見つめられるシーン、想像しただけでドキドキが止まらん!続きが気になりすぎます、早くデートシーン読みたいよ〜!!🌸