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「ななな何すんだよ!? 心臓に悪いことすんな!」
「すいません、つい! それより准さん、夜中ですから……そんな声大きいと夢の世界に入ってる赤ん坊が起きちゃいますよ」
涼に袖を引かれ、慌てて口を手で覆った。確かにもう時間も遅いんだけど、何か納得いかない。
「もう、元はと言えばお前のせいだろ。……さっきも。急にどっか行くなっての」
「あ、待っててくれたんですか?」
「加東さんも帰ったし、ちょうどいいからな」
「お話終わるの早かったんですね。そうそう、さっきマンションの前でお会いしましたよ! ビールお裾分けしときました!」
涼は元気に言うと、今度は静かに俯いた。
「待っててくれて、ありがとうございます」
「あぁ……」
涼の頬は腫れてるかのように赤い。吐く息も白く、見ていて寒々しい。実際、こうして立ってるのも凍えそうなほど辛い。だからもう中に入ろう。そう声を掛けようとしたのだが……彼から真逆の提案をされた。
「准さん、良かったらちょっと歩きませんか? 帰ってくるとき気が付いたんですけど、星が綺麗なんです」
「星。別にいいけど……寒くないのか?」
涼は迷いなく頷いたので、特に深いことは考えず星を見に行くことにした。
でも意外だ。
俺も、星を見るのが好きだから。
向かったのは、マンションから少し離れた所にある公園だった。かなり敷地が広く、最近綺麗に整備された。夜中でもジョギングしてる人をよく見かける。
「准さん、ビールどうぞ。プレミアムです」
「おぉ、サンキュー」
ベンチに腰掛けると、涼はビニール袋からたくさんの酒を取り出した。
「でもな、こんな所で酒なんか飲んじゃだめだぞ」
「と言いつつ准さんは飲んでるじゃないですか?」
「節度を守るから、今日は特別な。でもお前は守れないから俺の家の前でベロベロになってたんだろ?」
「そりゃあ、あの日は間違いなくヤケ酒でしたもん」
涼は不満そうにハイボールの缶を開けた。
「悪癖になるから、酒は辛い時じゃなくて嬉しい時に飲みなって」
「そうですね。嬉しい時があればの話ですけど」
ああ言えばこう言うんだから、本当に困ったちゃんだ。事実なのかもしれないけど。
「……さっきは、すみませんでした」
涼の弱々しい声。いつも馬鹿みたいに明るい癖に、たまに見せるその弱さが気になって仕方なかった。