「ようアリス!!」
夢の中にあった意識が彼女の元気な声で現実に戻された。
午前4時。今の今まで人形を作っていたところだったが、
どうやらうたた寝してしまってたようだ。
「あら魔理沙、こんな時間になんの用かしら?」
「決まってるだろ、人形作りの邪魔しに来た」
だが今回ばかりは来ない方がよかったな、と太陽の様な笑顔で言う。
「本当に貴女は…無駄なことしかしないのね。いや、暇なのね?」
「まあ私が邪魔したところで、お前が人形を作る手を止めないってのは
百も承知なんだよ。けど、どこまで集中できるのか気になるだろう」
いつも言葉では彼女を軽くあしらい、いなしていた。
いや、側から見れば逆なのかのかもしれない。
そこの真実は分からないが。
何はともあれ、私は魔理沙が好きだ。
彼女が家を訪ねてくるたび心臓が跳ねる。
「どうした、急に穴の開くほど見つめて」
今ここで彼女を押し倒したらどうなるだろう。
眼球に針を刺したらどうなるだろう。
きっと失明して、視野が狭まるだろう。
両方に刺せば、2度と幻想郷の景色を見ることは叶わないだろう。
いや、見えなくなればいい。
私以外を見る魔理沙の目なんて、いらない。
なら全てを見れなくすればいい。
「リス」
「アリス!!」
「…えっ?何?」
「どうした?まだ夢の中にいるのか?」
ああ、私は何を考えていたのだろう。
こんなに美しい彼女の目に、針など刺せるはずがない。
「えっと、少し外の空気を吸ってくるわ」
「大丈夫か?顔色悪いぞ?いつもだけど!」
「うっさい」
:
:
:
魔理沙のことが好きだから。
魔理沙の全てを私のものにしたいから。
ひどいことがしてみたい。
彼女は私にどんな反応を見せてくれるのか。
悲しむのか、痛がるのか、怨むのか、笑うのか
私の世界は彼女が中心で、彼女こそが全て。
魔理沙がいない世界は、主人公がいないハリボテの大舞台。
ああ、話がまとまらない。私は結局彼女をどうしたいのか、どうしてもらいたいのか。
愛たいのか、愛されたいのか
ひどくしたいのか、乱暴されたいのか
私は、
「悩み事か?アリスらしいな」
「!?」
いつから隣にいたのだろう、気配を感じとれなかった。
集中しすぎて周囲が見えていなかったらしい。
私の悪い癖だ。
「言ったでしょ、外の空気を吸ってくるって」
「窓が開いてるのに外の空気を吸いたがるバカがいるか?」
近づかないで、貴女のためだから。
彼女が近くにいると、私は獣になってしまう。
自分の欲しか頭にない、愚かな獣に。
いつも堪えるのに必死だった。
リビドーが決壊して、貴女を襲ってしまいそう。
性的なものではない。
そこで収まる範囲は既に超えてしまったから。
両腕両足を切断して、標本にして部屋に飾りたい。
貴女の綺麗な目で、指輪を作って薬指にはめたい。
骨を使ってハンガーラックを作りたい。
そのハンガーラックに掛けるハンガーも、貴女の骨で。
掛ける服は貴女の皮を、貴女の血で染めたもので。
ごめんなさい ごめんなさい ごめんなさい ごめんなさい
大好きな貴女なのに、大好きな魔理沙なのに、
自己嫌悪で嗚咽が止まらない。
私を狂わせたのは何?貴女はただの少女なのに。ただの人間なのに。
どうして私は貴女に執着してしまうの?
気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い
気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い
気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い
気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い
気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い
気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い…
「あ、アリス?」
「ごめんなさい…許して…許して…」
彼女に許しを乞う。
許してほしい。
彼女はなんで私が謝っているのか分からないだろうが。
「分かってるよ、アリス」
「私のことが嫌いなんだろ?」
「…え?」
そんなはずがない。貴女が好きだから。
大好きだから。嫌いになんてなれるはずがない。
好きで彼女を遠ざけていたのではない。
近くにいてほしい。だから
「嫌いなわけないじゃない!!!!」
「うおっ!?」
驚いた貴女の琥珀色の瞳。
もう大分明るくなってきた、午前5時。
「大好きだから、よ」
「お、おい…ついに頭までおかしくなったのか?」
「そうよおかしいのよ…こんな頭」
好きなのに殺したくなる。
好きなのに殴りたくなる。
そんなこと、決してしたくないのに。
今ここで大声を出したらどうなるだろう?
机をひっくり返したらどうなるだろう?
水をかけたらどうなるだろう…
その好奇心の延長線。
なぜそれが彼女に向いてしまったのかは分からない。
きっと、彼女には磁石のように人を惹きつける魅力があるから。
「アリス…お前が何を言いたいのかは分からない。
何をしてほしいのか、なんで謝っているのかも」
「ただな、私はお前の全てを許すよ」
女神のようなひと。天女のようなひと。
こんな私の罪を全て受け入れてくれる、海のようなひと。
「私は汚い人間なの。もう私と関わらない方がいいわ。」
「今更お前と関わらないなんて、逆に難しいぜ。」
私は彼女に何をしてほしい?
私は何を欲している?
何を貰えば満たされる?
この獣を鎮めるのに必要なものは何?
愛が欲しい。
好きと、言ってもらいたい。
私は魔法使いだ。魔女だ。
人々の誤解により、私は決して好かれる者ではなかった。
愛が足りなかった。
愛し方を知らなかった。
だから彼女の全てが気になった。
どうすれば喜んでもらえるのか、どうすれば驚いてもらえるのか。
それが好奇心となり、彼女にありとあらゆることをしたくなった。
どんなにひどいことでも、どんなに難しいことでも。
彼女の骨格が気になった。
彼女の血液が気になった。
彼女の全てが気になった。全てが知りたかった。
聞けばよかったのに。
簡単なことは聞けばよかったのに。
いつも変な方向に空回りしてしまう。
「アリス、私も好きだよ」
「…ごめん、よく聞いてなかったわ」
「好きだから、邪魔しに来てたんだよ。」
彼女も同じだった。
両思いだった。分からなかった。
好きなのに、気づけなかった。
夢のように都合の良い展開。
まさか、まだ夢の中にいるのかもしれない。
軽く頬をつねる。
「…いたい」
「何してるんだ?」
嘘だ。彼女が私を愛してくれるはずがない。
こんなに醜い私を愛せるなんて、彼女の愛はアガペーだ。
罪人に対して無償の愛を注ぐ、神の慈愛だ。
逆に苦しい。私が幸せになってもいいのか分からない。
でも、ここで逃したら一生後悔する。
「さっきのって、告白なの?」
「そのつもりだったんだけどな」
「月はもう見えないわよ」
「え、なんだそれ、振ったのか?」
「考えさせて」
急に言われても分からない。
ただ一つ言えるのは、私の中の獣はまだ生きている。
いつかまた、彼女にひどいことをしたくなる。
目玉をくり抜いて、四肢を切断したくなる。
首を玄関に飾りたくなる。
それでも、彼女は許してくれるだろうか
「魔理沙、私のために死ねる?」
「もちろんだ」
良かった
彼女は許してくれるようだ
私が、どんなことをしても。
またリビドーが飽和する。
獣が彼女を喰らい尽くそうと手を伸ばす。
だが、彼女はその手を拒みはしない。
ずっと一緒にいてくれる。
午前6時、私はまた罪を重ねた。
美しい彼女と共に。
コメント
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勢いで書いたけど自分でもよく分からない。 けど終わり方は満足してるわ。 東方原作遊んでないにわかが書いてごめんな アリマリが好きなんだよ