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16 - 第16話 不用品と過去の話

2025年05月10日

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不用品と過去の話



そんなわけで、キッチンに放置してあったいろんな使ってないもの、使わないものを道路沿いの我が家のガレージまで運び出す作業を始めた。出るわ出るわ、キッチンのあちこちに作られた収納場所からいろんな不用品が。

私は自分では片付け上手だと思っていたけど、まったくダメだったようで軽くショックを受ける。


「これさぁ……全部買った時の値段で買い取ってもらえたら、ものすごい値段になるね」


「それ言ったらさ、僕のもすごいことになるよ」


そう言って光太郎はガレージの奥にある、棚を指差した。そこにはもう何年も前に買い揃えた、ルアーを手作りするための器材や塗料が積み上げられていた。


「同じか」


「あぁ、同罪だ」


私たちは顔を見合わせて笑った。


その時足音がして、ご近所の奥さんが2人通りがかった。


「こんにちは。あら、お揃いで大掃除ですか?」


「いやいや、いらないものを家から運び出してるところです」


「へぇ!なんだかガレージセールでもやるのかと思いましたよ。これ、捨てちゃうんですか?」


「はぁ、新品ならいいですけどほとんど中古品なのでもうゴミになっちゃいます」


「ね、ちょっと見せてもらってもいい?」


「あー、どうぞどうぞ。汚れてるものも多いですが」


段ボール箱や袋に詰め込んで出してきたいろんなものを、2人で物色し始めた。こんなものまであったのかと呆れられそうで少々気恥ずかしいのだけど。


「ね、これって、捨てちゃうのなら私にくれない?」


そう言った奥さんの手には、カレーのシミがある保存容器とステンレス製の大きめのザルだった。


「いいですけど、使えます?」


「キッチンでは使わないけど、私、庭仕事するから。花壇の肥料を保存したり土をふるったりするのに使えるわ。ちょうどこういうのが欲しかったのよ」


「私はコレ、もらってもいい?」


それはデジタル式のハカリだった。きっちり計量しなければならない料理は、私にはできないからいらないと出してきたやつ。


「どうぞどうぞ。使ってもらえたら私もうれしいです」


まだ使えるものを捨ててしまうという行為には、いくらかの罪悪感を伴う。でも、誰かの何かの役に立つのなら、それはとても気分がいい。


「ね、うちもやろうかな、これ。羽田さんちみたいに夫は協力してくれないけど、なんだか私も片付けたくなった」


「私も!思いっきり処分すると気分爽快だよね?」


それにしてもたくさんあるわね、うちはもっとあるかも?と話しながら2人は帰って行った。


「あの人たちもやるね、きっと」


「だね」


両手にザルやハカリを持った2人を見送った。うちでは不用品でも、使い方や使う人が変わるとまだ利用できるものがあると気づいた。





昼過ぎには、あらかたのものを移動し終えた。ガランとしたキッチンは思ったより広い。


「あ、そうか!収納場所を作ったからそこにものを溜め込んでたのかも?」


DIYに一時期ハマって、キッチンのあちこちの隙間に収納棚を作ったことがある。そして収納スペースができると、そこに物を置いて隙間を埋めたくなる習性が私にはあって、それがピッタリハマると楽しかった記憶が蘇った。まるでパズルをパチッとはめ込むみたいな感覚だった。


「収納は、収納量の7割くらいがいいと何かで読んだことがあったわ。収納場所をなくせばモノも増えないかもしれないね」


「モノが多いと探し物も増えるしね。涼子ちゃん、いつも言ってたよね、探し物してる時間が人生で一番もったいないって」


確かここにあったはず……と思いながら、あちこち探しまわるのはイライラする。そしてたいていのものは、探すことを諦めたり新しいものを買ったりするとひょんなとこから見つかったりもする。そしてそれは、数が増えてもまたなくしてしまい、また探すハメになる。モノが多すぎなんだろうなとずっと思ってはいたけれど。ここにきて改めてそう思った。


「これからは、できるだけ必要なものだけを置くことにしなきゃね。モノの管理とかできなくなりそうだわ」


「あー、そうするとさ、リビングとかもさっぱりしたくなってきたぞ。順番にやるか」


なんだか楽しくなってきた。午後からは、片付いたキッチンの模様替えをして、ダイニングテーブルを作業台として使えるように壁に寄せてみた。食事はリビングのテーブルでとることにした。


夕方になったけど、どうしてもガスで炊飯する鍋を買おうということになり、2人でホームセンターに出かける。


「子どもも独立していて夫婦ふたりだけだと、こんなにもゆっくり買い物ができるんだね」


私がしみじみと言う。


「そうだね、今日は疲れたから晩ご飯食べに行こうよ……って、あ、ムダ遣い?」


肩をすくめる夫を見て、クスリと笑ってしまう。


「こんな時くらい、外食しようよ。その方がゆっくり買い物できるし」


「じゃあさ、あのファミレスに行こうよ。もう何年も行ってないけどさ、CMで美味しそうなハンバーグやってたから。ま、そのうちあれ以上のものを僕がご馳走するけどね」


子どものようにうれしそうにファミレスの話をしている光太郎を見ていたら、うしろから視線を感じた。知人がそこにいる、そんな視線だったから振り返った。


「あ、こ、こんにちは」


そこには私たちとさして年の変わらない夫婦がいて、夫の方が私の知り合いだった。


「あー、こんにちは、いや、こんばんは?かな。お久しぶりですね。お買い物ですか?」


「えー、まぁ……」


___そっちから視線を送ってきたのに、なんで視線をそらすのさ!


と思ったけれど、あんなことがあったのだから仕方ないかと奥さんの方を見た。なんだか怒った顔でこちらを睨んでいるようだけど。


___誤解をといてないの?












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