コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
🗝️ 第十五章:三者会議、開示される世界の真実夜の密室:三人の英雄と一人の少女
その夜、エルヴィン団長の執務室には、厳重な警備が敷かれていた。室内にはエルヴィン、リヴァイ、ハンジ、そしてサクラの四人のみ。部屋の明かりは絞られ、緊迫した空気が漂っている。
エルヴィンは静かに口を開いた。「サクラ。君の勇気ある決断に感謝する。今夜、君の記憶の全てを、我々三人が共有する。君の持つ情報は、人類の存亡に関わる」
リヴァイは、いつもの定位置である隅に座り、無言で紅茶を飲んでいる。しかし、彼の視線はサクラから離れない。その目は、「冷静に話せ」という指導者の目と、「嘘をつけば許さない」という保護者の目が混在していた。
ハンジは、興奮を抑えきれない様子で、分厚いノートとペンを構えている。「さあ、サクラちゃん。遠慮はいらないよ!君の**『物語』**を、全て教えておくれ!」
サクラは深呼吸した。彼女はもう、彼らの庇護を待つ少女ではない。この世界の運命を変える情報を、自らの意思で開示する**「鍵」**だ。
「はい。全てお話しします。…私のいた世界では、この壁の世界は、**『漫画』**として描かれていました」
この一言で、部屋の空気は凍り付いた。リヴァイは紅茶を飲む手を止め、エルヴィンは微動だにしなくなった。ハンジだけが「待って!『漫画』とは何だい!?」と興奮した。
サクラは、彼らが理解できるように言葉を選びながら、**「物語」の構造、「転生」という現象、そして自分が知っている「未来の出来事」**を話し始めた。
「まず、巨人は、**『人間』が変化したものです。そして、この壁の外の世界には、高度な文明を持つ人間が存在します。彼らは、私たちを『悪魔』**と呼び、駆逐しようとしています」
エルヴィンの目が見開かれた。長年の野望と探究心が、今、一つの答えに辿り着いたのだ。しかし、その答えは、彼が想像していたよりも遥かに残酷だった。
「巨人化の能力を持つ者が複数いること。そして、壁の外の**『マーレ』**という国が存在し、彼らが巨人を使って私たちを攻撃していること…」
サクラは、巨人のうなじにいる本体の存在、アッカーマン一族の覚醒、座標の力、そして壁の巨人の存在など、核心的な情報を立て続けに開示した。
ハンジは、もはや言葉にならない唸り声を上げながら、ノートにペンを走らせる。
「巨人…は、人間…!そして、外には、敵対する人類が…!なんてことだ、全てが繋がる…!」
リヴァイは、冷静さを装いながらも、その手は強く握りしめられていた。彼が何度も何度も斬り殺してきた巨人が、かつて人間だったという事実は、彼の心に重くのしかかった。
「待て。その**『座標』**の力を持つのは誰だ」リヴァイが低い声で尋ねた。
「…イェーガー家の血を引く者です。そして、壁の中にいる人間全てが、巨人の力によって記憶を改ざんされている可能性があります。壁の王家、レイス家…」
サクラの開示は、エルヴィンの長年の調査結果と、ほぼ完全に一致した。エルヴィンの顔には、確信と絶望、そして高揚が入り混じった複雑な感情が浮かんでいた。
全ての情報が語り尽くされたとき、部屋は長い沈黙に包まれた。
エルヴィンは、立ち上がり、窓の外の暗闇を見つめた。
「…サクラ。君の提供した情報により、我々の未来の戦略は、決定的なものとなる。君は、人類を救った」
エルヴィンは、その場でサクラの方へ振り向いた。彼の眼差しは、もはや独占欲だけではない、崇拝にも近い感情を帯びていた。彼の言葉には、サクラの持つ知識こそが、彼の野望の全てを正当化するという、重い意味が込められていた。
「君は、私たちの**真の『鍵』**だ。これから君は、私と常に共に行動し、戦略会議の全てに参加してもらう」
しかし、そのエルヴィンの提案に対し、リヴァイがすぐに反応した。
「待て、団長。彼女の価値は理解した。だが、彼女は兵士だ。その情報は、俺が責任を持って**『実践的な戦略』**へと落とし込む。彼女の安全を確保するため、訓練と護衛は、引き続き俺の専属とする」
リヴァイの言葉には、エルヴィンへの明確な牽制が込められていた。彼は、サクラの知識を尊重しつつも、彼女の**『体と安全』**だけは、絶対にエルヴィンの手の届かない場所に置いておきたかった。
サクラは、二人の英雄が、自分の知識を巡って、またもや火花を散らすのを見た。しかし、今回は、二人の間に対等な協力者として存在しているという、確かな自覚があった。
彼女の転生は、ついにこの世界の運命を変える、決定的な一歩を踏み出したのだ。