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誰も知らない、高嶺の花の裏側3
第117話 〚分からない優しさ〛
― 澪視点 ―
最近、
先生が優しい。
怒られない、とかじゃない。
注意されない、とかでもない。
なんていうか――
見られ方が違う。
授業中。
私がノートを取っていると、
先生の視線を感じる。
でも、
探る感じじゃない。
確認して、
少し安心したみたいな。
(……何かあった?)
プリントを配るとき。
「ありがとう」
って言ったら、
「うん」
って、
やけに柔らかく返された。
(……今までと違う)
放課後。
廊下ですれ違ったとき。
一瞬だけ、
立ち止まられた。
「最近、どう?」
それだけ。
困ってる?
とか
何かあった?
とか
聞かれない。
ただの、
“どう?”
私は、
少し考えてから言った。
「大丈夫です」
本当かどうかは、
自分でも分からない。
でも、
嘘でもない。
先生は、
それ以上聞かなかった。
「そう。
なら、よかった」
それだけ言って、
去っていった。
(……なんでだろ)
優しすぎる。
踏み込まない。
でも、
放ってもいない。
その距離感が、
不思議だった。
教室に戻ると、
えまが目を合わせてくる。
しおりは、
何も言わずに笑う。
りあは――
なぜか親指を立てた。
意味が分からない。
(……なに?)
私は、
一人で首を傾げる。
何かが、
変わっている。
でも、
説明はない。
誰も、
理由を教えてくれない。
それなのに。
怖くない。
むしろ、
安心する。
先生も。
女子たちも。
そして――
海翔も。
私は、
まだ知らない。
先生が
“管理しない”と決めた理由も。
みんなが
“守る”側に回っていることも。
ただ一つ、
分かることがある。
私は、
今。
一人じゃない。
理由は分からないまま。
それでも、
この優しさの中に
身を置いていた。