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俺はあの日から少しずつ返信するようにした。
一日目。
スマホは、机の上に伏せたまま。
通知が来ても、すぐには見ない。
(……今日は、無理)
それでも、夜に一度だけ開く。
未読が、増えてない。
(……守ってる)
それだけで、胸が少し軽い。
二日目。
昼休み、ころんと並んで座る。
【ころん】「今日どう?」
【あっきぃ】「……普通」
【莉犬】「それ続いてるの、いいね!」
夜、ベッドに腰掛けてひとつだけ打つ。
【あっきぃ】
『今日は、学校行けた』
シュポッ、と音がなる。
すぐ、既読。でも、返事は、来ない。
(……いい)
三日目。
帰り道、夕焼けがきれいで、立ち止まる。
(……写真、撮ろ)
カシャ。
撮って、送らない。
代わりに、短く、ちぐちゃんに。
【あっきぃ】
『夕方、静か。』
ちぐちゃんから、数分後。
【ちぐさ】
『きれいだね』
それだけ。
(……それで、いい)
四日目。
ぷり兄から、来る。
【ぷりっつ】
『今日は、送らないつもりだった。
でも、元気ならそれでいい。』
(……律儀)
少し考えてから、返事をした。
【あっきぃ】
『ありがとう。今日は大丈夫。』
心臓が、少し早い。
でも、息は乱れない。
五日目。
まぜ兄。
【まぜ太】
『距離、守れてるか不安。
越えてたら言って。』
(……聞くんだ)
【あっきぃ】
『今のままで、ちょうどいい。』
返事が返るまでの間、
ころんくんが俺の肩を叩く。
【ころん】「ナイス!」
【莉犬】「ちゃんと言えてるよ」
少し、誇らしい。
一週間。
あと兄からだった。
【あっと】
『近況、ありがとう。続けなくていい。
必要な時だけで』
(……圧が、ない)
【あっきぃ】
『必要な時、送る』
それで、会話が終わる。
夜。
布団の中で、スマホを置く。
(……少しずつ)
毎日じゃない。
長文じゃない。
全部、返さなくていい。
でも。
(……俺が、選んでる)
【あっきぃ】「……進んでる」
小さく、確認する。
ここには、帰る場所がある。
向こうには、切らない糸がある。
その間で、
あっきぃは“自分の速度”を
初めて持てていた。