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「修さん。ビールちょうだい」
奥のパーティーをしている場所から、少し離れたカウンターに移動してこの店のオーナーの修さんに注文する。
「おっ、樹。向こうのパーティーどう? 盛り上がってる?」
「あぁ。アイツらは久々この店で集まれてるのもあって、すげー盛り上がってます」
修さんは昔オレがバイト先でお世話になった先輩で。
まだ高校生だったオレを大人の修さんがすげー可愛がってくれて世話してくれた。
そこから知り合いになって、修さんが元々高校の同級生だった奥さんの美咲さんと結婚して、このカフェ&バーの店『BLOOM』をオープンさせた。
そこからずっとこの店に通っている。
「で、樹は?」
「ちょっと面倒なのに声かけられたんで逃げて来ました」
「はは~ん。また女の子に逆ナンされた?」
「まぁ、そんなとこッスかね」
だから若かりしそんな軽い遊び程度に付き合った女性達をこの店にも連れて来たこともあったりで、10年以上の付き合いになる修さんはオレの女性遍歴を相当詳しく知っている。
「相変わらず樹はモテまくりだな~」
「いや、昔はそれも楽しかったですけど、今はもう面倒で仕方ないッス。今のオレは一人だけに好かれたらいいんで」
「樹、変わったよな~。あんな適当に遊んでたお前が、そこまで一人の相手に本気になるなんて夢にも思わなかったよ」
「オレもです。オレ一生あんな風にフラフラ適当に女と付き合っていくんだと思ってました」
「しかもその相手がまさかな~あの透子ちゃんだとは」
「ですよね。オレもビックリでした。まさかその人が美咲さんの親友だとは」
「いや~世間狭いよな~。まぁオレにしたら嬉しいと同時に面白くて仕方ないけど(笑)」
「いや修さん!オレ、マジで真剣なんですって!」
「わかってるわかってる・・ククッ」
あまりのオレの昔からの変貌ぶりに修さんはいつもこんな調子で面白がってからかってくる。
まぁ昔のオレからしたらこんな一途とか180度正反対で自分でもどうかしたのかと思うくらいのことだから、今までのオレを知ってる修さんにしたらそりゃ面白がるのも無理はない。
現にオレはこういう場で同年代の女性達を見ても、一向に心が動かない。
それどころか、彼女は今どうしてるのかとか、彼女もこんなことに実は憧れたりするのだろうかとか、結局彼女にすべて繋げてしまう。
あ~、オレ未だに声もかけれてないヘタレのくせして、何一人前にそんなこと考えてんだよ。
まずはオレを知ってもらうことが先だろ。