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るる
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幼い頃、母親に女の子の服を着せられることが多かった。それが影響したのか、昔から綺麗なものや可愛いものには目がなかった。服飾の道を選んだのは、そんな子供の頃の人形遊びの延長。自分の作った洋服で人を着飾りたい、そんな無謀な夢ができたから。
ただ現実は厳しい。より良いものを作るにはとにかく資金が必要だった。文化祭やら発表会やらでのモデルやそのメイクにかける費用、良い生地を使うためにもお金。もちろんミシンやらのプロ仕様の機械も実費。
さらに、課題が終われば新たな課題。こちらが気合いを込めるほど、講師からの熱のこもった批評を貰ってやりがいは感じる。ただ、喜ぶ暇も悲しむ暇もなく、すぐに次の課題が待っている。どれにも妥協はしたくないと思うほど出費は嵩んでいた。だから、睡眠よりバイトの時間が多くなるのは必然的だった。
負担がのしかかっても、親を頼る訳にはいかなかった。反対を押し切って進学した手前、弱音を吐くのも頼るのもプライドが許さなかったからだ。
きっと深夜バイトのことを知ったらひどく怒られただろう。だが、俺の進学のタイミングで両親は訳あって故郷の鹿児島に戻っている。弟もそれに付いていったので、今は一人暮らし。家族が俺の現状を知ることはなかった。
睡眠を削って、課題にバイトに勤しんでいた。その無限ループに疲弊していく中で出会った勇斗はまさに目の保養だ。
オーダーメイドであろうスーツはもちろん、ハイブランドのスーツも私服も既製品なのに、勇斗のために仕立てあげられたように着こなすスタイルとセンスの良さ。老若男女に好かれるだろう、かっこよくも綺麗でもあり、でも話すと人懐っこい雰囲気。
そんな奴から毎回ご指名で話しかけてくるのだから、意識せずにいられるか。
勇斗の、俺の顔が好きなんでしょ?の問いに答えるとしたら、はいそうですと認める以外にない。けど、それだけじゃなかった。いわゆる一目惚れ、そこからは沼のようだった。でも、こんな気持ちは無謀だと勇斗自身が教えてくれたんだった。
半年ほど前。
自分らしくないふわふわとした淡い感情を抱いていた頃、勇斗が何度か女性を連れていた。腕を組んで、距離が近くて。商品を選ぶ間も、レジを通している間も女性が勇斗の耳元でこそっと囁く。それに対して勇斗もやさしく微笑んでいた。どこかのドラマにでもありそうなワンシーン。
どちらも華やかで、住む世界の違いを思い知った。
そこで恋を終わらせた。不釣り合いな恋なんてしてる場合じゃない、学業に専念しろと言い聞かせた。むしろ一銭も払ってないのに顔を拝ませて貰えるだけありがたいと思うべきだ。
そんな失恋は置いておいても、いまだに勇斗の顔にはめっぽう弱い。でも、絡まれる時以外は特に他の客と変わらない対応をしていたはずだ。そううまく立ち回っていたつもりが、本人にはバレていた。ホストという職業柄、他人からの好意に敏感なのかもしれない。
そこでハッとした。
連絡先交換したってブロックしたら済む話だし、きっと今回までのこまめな連絡と食事が手切れ金代わりなんだ。
そう思えば、俺に対しての献身的な言動がしっくりきた。年齢だってそう変わらないのに、やっぱりオトナだ。客より何も知らない自分のことが好きな年下の俺で遊ぶのが楽しいのだろう。
そうと分かっていたら、やっぱり勇斗行きつけの店とか高級ステーキの店とかに行くべきだったな。