テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
1件
えっと何かの見間違いかな、?
♡200? 💬1?
てことで上げます
放課後。
校舎裏は、やけに静かだった。
夕焼けが紫苑を染めている。
「……来たけど」
フェンスに寄りかかる。
「逃げねぇって言ったし」
少しして、風が揺れる。
「えらいじゃん」
振り向くと、彼がいた。
でも。
昨日より、少しだけ薄い。
光の加減?
いや、違う。
背景が、ほんの少し透けて見える。
「お前さ」
なるべくいつも通りのテンションで言う。
「なんか、今日ちょっとヤバくない?」
「なにが?」
「その……存在感?」
彼は自分の手を見る。
夕陽が、指をすり抜けるみたいに見えた。
「時間、あんまりないから」
さらっと言う。
心臓が嫌な跳ね方をする。
「は? どゆこと」
「いるまが思い出したら」
紫苑を一輪、摘む。
「おれ、いらなくなる」
意味が、すぐには飲み込めない。
「いらなくなるって……消えるとか、そういう?」
「うん」
軽く言うなよ。
「ちょ、待て待て。そういうのナシな? 勝手に退場とか聞いてない」
笑ってごまかそうとするけど、声がうまく出ない。
「いるま」
彼が近づく。
「ちゃんと見て」
手を伸ばしてくる。
触れる直前、ひやりとした空気が胸に触れる。
その瞬間。
――放課後、ここで待ち合わせ。
――俺が遅れて走る。
――道路に飛び出す影。
――ブレーキ音。
息が止まる。
「……俺のせいだ」
声が、震える。
彼の目が揺れる。
「俺、約束してた」
思い出していく。
「紫苑、今年も一緒に見ようって」
あの日、俺は部活を優先した。
“ちょっとくらい待たせても平気だろ”って。
走って向かった。
でも。
待ってたのは、紫苑じゃなくて――
「……救急車」
膝が力を失う。
「俺が、急がせた」
スマホに入ってる、最後のメッセージ。
“もうすぐ着くから、道路渡って待ってて”
自分で打った文面が、鮮明に蘇る。
彼は、何も言わない。
ただ、少し困ったみたいに笑う。
「違うよ」
「違わねぇよ」
顔を上げる。
「俺が送らなきゃ、あんなことにならなかった」
沈黙。
夕焼けが濃くなる。
彼の輪郭が、さらに薄くなる。
「……でもさ」
彼が小さく言う。
「いるま、あの日からずっと、自分のこと責めてる」
「責めてねーし」
「うそ」
優しく言われる。
「忘れたんじゃなくて、閉じ込めただけ」
胸が締めつけられる。
「おれね」
彼は紫苑を握りしめる。
「いるまに思い出してほしかった」
一瞬、風が止む。
「でも」
少し寂しそうに笑う。
「ちゃんと笑っててほしかった」
その言葉で、何かが崩れる。
「……名前」
喉が震える。
「お前の、名前」
思い出せ。
あと少し。
彼の姿が、ゆらぐ。
肩の向こうが透けて見える。
「早く」
彼が、焦ったように笑う。
「紫苑、枯れちゃう前に」
紫の花びらが、ひらりと落ちる。
俺は立ち上がる。
泣きそうになるのをこらえて。
「——」
名前が、喉元まで来ている。
閲覧も増やせるように頑張る💪