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翌朝、霧はまだ街を包んでいた。館の中は昨夜の事件の緊張感が残り、誰もが口を閉ざしている。相沢はゆっくりと現場に足を踏み入れた。
霧島翔が倒れていた広間は、昨夜と変わらず静まり返っていた。しかし、相沢の目は鋭く細部を追った。
・床には凶器らしきものは一切落ちていない
・扉も窓も内側から施錠されていた
・壁や窓ガラスに指紋は残っていない
相沢はメモ帳を取り出し、頭の中で可能性を整理する。
「密室……侵入者なし、物理的に外からの犯行は不可能。となると、内部の誰か…もしくは巧妙な偽装か」
その時、彼は小さな手紙片を見つけた。霧島の手元にあった紙の端が、わずかに床に落ちていたのだ。読むと、文字は乱雑で読みにくいが、意味深な内容だった。
「今夜、すべての秘密が明らかになる。誰も信じるな」
この手紙に署名はない。だが、文字の癖や筆跡の細かい特徴を見れば、何者かの仕業と断定できる――。相沢は封筒に忍ばせた筆跡のサンプルを思い出す。
さらに調べると、霧島の書斎に小さな鍵付きの箱があることを発見した。箱の中にはいくつかの手帳や古い写真、そして複雑な暗号が書かれた紙が入っている。相沢はそれを手に取り、密室トリックの手がかりになりそうだと直感する。
その頃、館の他の人物たちは緊張と不安で言葉を少なくしていた。佐伯は何かを隠しているような視線を何度も逸らす。永井はメモ帳を握りしめ、事件をスクープに変えようと計算している。香坂は冷静を装いつつも、目の奥に動揺が見える。
相沢は静かに口を開く。
「誰も外に出ていないこの館で、犯行は行われた。だが、すぐにわかることではない――。小さな証拠と、皆さんの言動から推理を始めるしかない」
館の中に、また一層の緊張が走る。
相沢は手帳の暗号を開きながら、心の中で呟いた。
「この事件、簡単には終わらせない――真実は、霧の中に隠されている」