テラーノベル
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スマホを握りしめ、布団にくるまったまま、
僕はじっと画面を見ていた。
既読がついたのは、ほんの数分後だったのに、
やけに長い時間が流れた気がした。
元貴『若井、何してるかな……』
そうつぶやくと、LINEに返信がきた。
“どうした?
元貴、大丈夫?今日、何かあった?”
少し落ち着いたその文字を見て、
胸の奥がじんとした。
でも、うまく返事ができなくて
“ううん、大丈夫”と打つのがやっとだった。
すぐに既読がつく。
そして、またメッセージ。
“絶対大丈夫じゃないじゃん。
電話してもいい?”
その瞬間、着信音が鳴った。
若井の名前が画面に浮かぶ。
僕は少しだけ迷いながら、受話ボタンを押した。
元貴『……もしもし』
滉斗『元貴?』
若井の声は、思っていたよりも真剣で、
心配そうだった。
元貴『うん…ごめん、
なんでもないよ、ほんとに――、』
滉斗『弱いとこ見せていいって、
俺、お前のこと放っておける訳ないだろ』
若井のまっすぐな言葉が、胸に沁みる。
声を搾り出すように、
ぽつりぽつりと話し始める。
元貴『…涼ちゃんと、最近ずっと一緒で、
楽しそうなのに、僕だけ…
遠くなっちゃった気がして、
それがすごく寂しくて…
若井も、きっと僕のこと、
気にしてくれてるって分かってたけど、
それでも、怖かった…
どんどん一人になっていくみたいで、
ほんとは、今日、学校でも…
、ずっと泣きそうだった、』
気づいたら、涙がまた、頬をつたい始めていた。
受話器の向こう側で、若井がゆっくりと
『うん、うん』と相槌を打ってくれている。
滉斗『ほら、やっぱ泣いてるじゃん』
優しく揶揄うような、その声。
元貴『……ごめん、』
鼻をすする音が自分でも、
聞こえてしまって恥ずかしいのに、
それでも止められなかった。
滉斗『いいんだよ、
俺、元貴のこと大事だから、
寂しかったって言ってくれるの、
むしろ嬉しいし…
放課後、
ずっとどうしようかなって思ってたんだ、
今度、ちゃんと元貴のこと誘うから、
お前が寂しい思いしないようにするよ、絶対』
1つひとつの言葉が、
僕の固まっていた心を解かしていく。
元貴『ありがとう…若井、本当に、ごめん』
涙が溢れて、今度こそ誰にも気づかれず、
布団にすべてしみ込んでいく。
でも電話の向こうの若井は、
それでも優しい声でこう言った。
滉斗『全部話してくれてありがと、
俺からもいっぱい話すからね、
元貴は一人じゃないから、
絶対、俺が離さない』
泣きながら、僕は小さく
『うん…ありがと、』と言った。
呼吸が落ち着くまで、ずっと若井が無言のまま、
それでも切らずに寄り添い続けてくれていた。
ようやく涙が渇いてきたとき――
僕は、そっと笑えた気がした。
コメント
5件
元貴と滉斗 少し安心した でも涼ちゃんもホントは寂しいだけだと思うな…