[消えたオーロラと残った温もり」
涼架side
ユリと私がユウヤと若井の元へ向かっていると再び、まばゆい光が二人を包み込んだ。
それは、空に揺らめくオーロラの光が地上に降り注いだかのようだった。
「わ、若井…!?」
私が声を上げるが、ユリの声はもう聞こえない。
光が消えた時、私たちは、さっきまでいた湖畔の岩場に立っていた。
空には、満点の星が瞬いているが、先ほどまで見えていたオーロラは、もうなかった。
「…戻ってきた…」
若井が静かに呟いた。
私は、若井の顔を見つめ思わず彼の手に触れた
「…若井。あれは…夢じゃなかったんだね」
「ぁあ」
若井は頷いた。
私の手に残る温かい感覚。
それは、夢ではなかったことの証だった。
「ユウヤさんたちは…元気かな…」
私がそう呟くと、若井が少しだけ微笑んだ。
「大丈夫だ。あいつは、後悔なんてしてないよ」
若井の言葉に、私は、ユリが言った言葉を思い出した。
「私たちがこの出会いを大切にすれば、きっとこの温かい気持ちは、永遠に続くから」
そして、私は、若井の瞳をまっすぐ見つめた。
そこには、もう、戸惑いや迷いはなかった。
あったのは、ただ、涼架へのまっすぐな気持ちだけだった。
「ねぇ、若井」
「なんだよ」
「…帰ろう」
私はそう言って、若井の手を引いて歩き出した
温かくて穏やかな空気が流れていく。
自転車に乗り、来た道を戻る。
若井は、もう「乗り物酔いするから」なんて言わなかった。
私は、若井が漕ぐ自転車の後ろに乗って、彼の広い背中を見つめる。
そして、今、この瞬間がとても愛おしいと感じていた。
「ねぇ、若井。私、今日、ユリさんから、たくさん大切なこと教わったんだ」
「…俺も」
若井の声は、少しだけ、震えているようだった
二人はもうすぐ、それぞれの道に進む。
それは、もう、寂しいことじゃなかった。
「さよならには、意味がある」
その意味を、私たちは今知ることが出来たから
それは、別れが終わりじゃなくて、温かい気持ちをくれる、大切な時間だということ。
そして、その温かい気持ちは、二人が離れていても、きっと、ずっと二人を繋いでくれる。
この温かい気持ちを胸に、二人はそれぞれの道を進んでいく。
そして、いつか再開した時、もっと素晴らしい自分になっていることを、二人とも知っていた
次回予告
[卒業までの道のり]
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コメント
1件
ユリさんとユウヤさんのおかげだね!